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千春と勇の関係
夕暮れ。
あれからてんやわんやの口論の結果。今週末の日曜日に、学校のグラウンドで練習することが決定した。
二時間も話し合ったチーム千春だったのだが、集まったメンバーがあまりに個性的過ぎて、各々の意見がぶっ飛び過ぎていたのが一番の問題だった。
まとめ役の仁は、没個性がなんとやらとボソボソ呟く始末であり、暁がそれに追い撃ちを掛けるように仁をイジメる。
夏女は「見よ!我が聖剣……インペリアルソード!」とか言って、物差しを振り回して遊んでたし、奏天院に限っては、何にもしなかった。
勇が使い物にならなかったのは言うまでもないだろう。
そんな感じで、結局は千春が皆の意見を却下………もとい最も合理的な案を考え出したというわけだ。
そんな作業を終えてか、もう日が暮れる間近。千春と勇は二人並んで道の上を歩いていた。
若干疲れたのか、足どりが些か重い千春と、満面の笑みを周囲にばらまく勇。双方のテンションはまったくの正反対のところにあった。
「あー………今日は色んなことがありすぎたな」
錆び付くような声が、千春自らの耳をつんざく。あまりにもか細いその声は、未だ至福の時を過ごしている勇にはまったく届いていない。
千春は今日一番の深々とした溜息をついた。最早呆れているのだ。
先程の自己紹介からずっとこの調子。
勇は新しく友達が出来たのがよほど嬉しかったのか、ミニ番の呼び名に似つかないくらいの笑みをこぼしていた。
笑顔を振り撒くと言ったものだが、勇の場合は笑顔をばらまくというニュアンスがしっくりくる。
まあ、それがものすごく恐いということに、本人はまったく気づいていないわけなのだが、
そんな様子の勇に、千春は投げやりのような態度でぼやいた。
「………なぁ、勇。友達が出来て嬉しいのはわかったからさ。ちょっとは落ち着けよ」
「うっ……うっさいわね。別に嬉しいわけじゃないもん!」
「もん!って………お前今明らかに浮かれてるだろ」
「浮かれてない!」
「うおっ!?」
千春の頬を勇の拳が音速の速さで掠めた。つーっと千春の頬から赤い筋が垂れている。
なんて奴だ。ちょっと突っ掛かっただけで命が危うい。
「…………お前は俺を殺す気かよ」
頬を撫でながら千春。
「あらゴメンなさい。綺麗なお顔に傷がついてしまいましたね。おほほ!」
「喧嘩売ってんのかヤンキー女!!」
「だっ…!?誰がヤンキーだ!私はどう見たってか弱い女の子だろーが!」
「言葉遣いが既に『か弱い』に該当してねーんだよ!」
ウガーッ!といがみ合う二人だったが、やはり先に身を低くの千春だ。
獅子のように長い髪を逆立てて唸る勇に、千春は両手を上げて降参のポーズ。
喧嘩になったら言いたいことをさっさと言って、すぐに身を退く。これが勇と良い関係を保つための最重要事項だ。
そんな千春に、勇はフンッと不機嫌MAXな態度で一瞥した。だが、やはり顔はにやけている。
「……………ま、よかったな。新しい友達が出来て」
「まあ……あいつらがどうしてもっていうから仕方なくね、仕方なく」
素直な物言いではないが、友達が出来て嬉しいのは本当のようだ。
あれからてんやわんやの口論の結果。今週末の日曜日に、学校のグラウンドで練習することが決定した。
二時間も話し合ったチーム千春だったのだが、集まったメンバーがあまりに個性的過ぎて、各々の意見がぶっ飛び過ぎていたのが一番の問題だった。
まとめ役の仁は、没個性がなんとやらとボソボソ呟く始末であり、暁がそれに追い撃ちを掛けるように仁をイジメる。
夏女は「見よ!我が聖剣……インペリアルソード!」とか言って、物差しを振り回して遊んでたし、奏天院に限っては、何にもしなかった。
勇が使い物にならなかったのは言うまでもないだろう。
そんな感じで、結局は千春が皆の意見を却下………もとい最も合理的な案を考え出したというわけだ。
そんな作業を終えてか、もう日が暮れる間近。千春と勇は二人並んで道の上を歩いていた。
若干疲れたのか、足どりが些か重い千春と、満面の笑みを周囲にばらまく勇。双方のテンションはまったくの正反対のところにあった。
「あー………今日は色んなことがありすぎたな」
錆び付くような声が、千春自らの耳をつんざく。あまりにもか細いその声は、未だ至福の時を過ごしている勇にはまったく届いていない。
千春は今日一番の深々とした溜息をついた。最早呆れているのだ。
先程の自己紹介からずっとこの調子。
勇は新しく友達が出来たのがよほど嬉しかったのか、ミニ番の呼び名に似つかないくらいの笑みをこぼしていた。
笑顔を振り撒くと言ったものだが、勇の場合は笑顔をばらまくというニュアンスがしっくりくる。
まあ、それがものすごく恐いということに、本人はまったく気づいていないわけなのだが、
そんな様子の勇に、千春は投げやりのような態度でぼやいた。
「………なぁ、勇。友達が出来て嬉しいのはわかったからさ。ちょっとは落ち着けよ」
「うっ……うっさいわね。別に嬉しいわけじゃないもん!」
「もん!って………お前今明らかに浮かれてるだろ」
「浮かれてない!」
「うおっ!?」
千春の頬を勇の拳が音速の速さで掠めた。つーっと千春の頬から赤い筋が垂れている。
なんて奴だ。ちょっと突っ掛かっただけで命が危うい。
「…………お前は俺を殺す気かよ」
頬を撫でながら千春。
「あらゴメンなさい。綺麗なお顔に傷がついてしまいましたね。おほほ!」
「喧嘩売ってんのかヤンキー女!!」
「だっ…!?誰がヤンキーだ!私はどう見たってか弱い女の子だろーが!」
「言葉遣いが既に『か弱い』に該当してねーんだよ!」
ウガーッ!といがみ合う二人だったが、やはり先に身を低くの千春だ。
獅子のように長い髪を逆立てて唸る勇に、千春は両手を上げて降参のポーズ。
喧嘩になったら言いたいことをさっさと言って、すぐに身を退く。これが勇と良い関係を保つための最重要事項だ。
そんな千春に、勇はフンッと不機嫌MAXな態度で一瞥した。だが、やはり顔はにやけている。
「……………ま、よかったな。新しい友達が出来て」
「まあ……あいつらがどうしてもっていうから仕方なくね、仕方なく」
素直な物言いではないが、友達が出来て嬉しいのは本当のようだ。
更新日:2012-02-10 16:20:06