- 15 / 58 ページ
突発的な転がり込み
「ああ………ほんと、酷い目にあった」
顔中に痣だらけの千春。まあ自業自得と言えばそうなるのかもしれない。
今はホームルームも既に終わっており、教室には帰宅部の生徒がまばらだ。また、教室で昼ご飯を食べてから部活にいる生徒もいる。
現在の教室の空気は和やかだ。ミニ番がいないとこうも違うのか、と千春は思った。
千春は部活など入っていない。いつもだったら真っ先に家へと帰るのだが、球技大会に出ることになったので、仁と話し合っているところだったのだ。
「だな。しかしまあ、あのミニ番相手によくもあんな真似が出来たな。正直に言って、お前はもう死んだと思ったよ」
食堂で買ってきたりんごジュースをズルズルと吸いながら、親友の業を彼なりに労っている。
「死んだって………まあ周りから見たらそう見えるんだろうな」
「ん?その物言いでは、千春はどういった見え方がしていたんだ?あのミニ番に対して」
「それは………」
千春自身、それはよくわからなかった。噂で聞いていた神童は、根っからのヤンキーで誰にも止められない暴れん坊と聞いていた。
けれども、実際に神童を目にした時、それまでの彼女に対するイメージは全て消え去った。
確かに目つきが悪く、言葉遣いも並じゃない。暴力的だし、まるで爆弾みたいな奴だ。
だが、千春には妙に引っ掛かることがあった。
今日だけで二度も神童を怒らせてしまった千春だが、その二回とも、千春は神童のことを恐いとは思わなかったのだ。
もちろん恐かったのだが、恐い種類が違った。それは圧倒的な力を前に立ち尽くす恐怖などではなく、追い詰められた者が最後の力を振り絞って抵抗するような。言わば自己防衛のような恐怖。
神童は千春に怯えたが故に暴力を振るったのかもしれない。
「う〜ん。なんか違うんだよなぁ」
頬に出来た痣を撫でながら、千春はぼやいていた。
今思えば、あの席はもう神童の席となっていたのだ。千春は苦笑しながら教室の真ん中にある机に目をやった。
あの生意気なチビめ。こんな顔にされた礼は必ず返してやる。
胸の中で悪態をつく千春だったが、それとは裏腹に表情がにやけていた。
神童のことは嫌いではない。好き………でもないと思う。妙な感じだが、それがどういった気持ちなのか、千春は答えを出せずにいた。
「仁……俺今どんな顔してる?」
「そうだな…」
腕組みをして妙な間をとる仁。ほんとはすぐに答えられるくせに、ユーモアに優れた奴だ。
「よし、わかったぞ。千春。お前は今球技大会のことで頭がいっぱいだ、という顔をしている」
「………そっちに持っていくか」
お手上げだ。仕方ない。真剣に球技大会について話し合ってやろうじゃないか。
仁の妙なペースに乱されながらも、千春は笑ってごまかした。
だが、千春の友人は仁だけではない。仁以上にユニークな奴もいるのだ。
そいつは勢いよくドアを開き、教室の中に入ってきた。
茶髪のショートカットでネコ目。背丈は平均的でその明るい表情が彼女の活発な性格を強調していた。
「千春ちゃんに仁!話は聞いたよ!私も仁のチームにスーパー助っ人マンとしてそのチームに入れさせてもらうよ!」
顔中に痣だらけの千春。まあ自業自得と言えばそうなるのかもしれない。
今はホームルームも既に終わっており、教室には帰宅部の生徒がまばらだ。また、教室で昼ご飯を食べてから部活にいる生徒もいる。
現在の教室の空気は和やかだ。ミニ番がいないとこうも違うのか、と千春は思った。
千春は部活など入っていない。いつもだったら真っ先に家へと帰るのだが、球技大会に出ることになったので、仁と話し合っているところだったのだ。
「だな。しかしまあ、あのミニ番相手によくもあんな真似が出来たな。正直に言って、お前はもう死んだと思ったよ」
食堂で買ってきたりんごジュースをズルズルと吸いながら、親友の業を彼なりに労っている。
「死んだって………まあ周りから見たらそう見えるんだろうな」
「ん?その物言いでは、千春はどういった見え方がしていたんだ?あのミニ番に対して」
「それは………」
千春自身、それはよくわからなかった。噂で聞いていた神童は、根っからのヤンキーで誰にも止められない暴れん坊と聞いていた。
けれども、実際に神童を目にした時、それまでの彼女に対するイメージは全て消え去った。
確かに目つきが悪く、言葉遣いも並じゃない。暴力的だし、まるで爆弾みたいな奴だ。
だが、千春には妙に引っ掛かることがあった。
今日だけで二度も神童を怒らせてしまった千春だが、その二回とも、千春は神童のことを恐いとは思わなかったのだ。
もちろん恐かったのだが、恐い種類が違った。それは圧倒的な力を前に立ち尽くす恐怖などではなく、追い詰められた者が最後の力を振り絞って抵抗するような。言わば自己防衛のような恐怖。
神童は千春に怯えたが故に暴力を振るったのかもしれない。
「う〜ん。なんか違うんだよなぁ」
頬に出来た痣を撫でながら、千春はぼやいていた。
今思えば、あの席はもう神童の席となっていたのだ。千春は苦笑しながら教室の真ん中にある机に目をやった。
あの生意気なチビめ。こんな顔にされた礼は必ず返してやる。
胸の中で悪態をつく千春だったが、それとは裏腹に表情がにやけていた。
神童のことは嫌いではない。好き………でもないと思う。妙な感じだが、それがどういった気持ちなのか、千春は答えを出せずにいた。
「仁……俺今どんな顔してる?」
「そうだな…」
腕組みをして妙な間をとる仁。ほんとはすぐに答えられるくせに、ユーモアに優れた奴だ。
「よし、わかったぞ。千春。お前は今球技大会のことで頭がいっぱいだ、という顔をしている」
「………そっちに持っていくか」
お手上げだ。仕方ない。真剣に球技大会について話し合ってやろうじゃないか。
仁の妙なペースに乱されながらも、千春は笑ってごまかした。
だが、千春の友人は仁だけではない。仁以上にユニークな奴もいるのだ。
そいつは勢いよくドアを開き、教室の中に入ってきた。
茶髪のショートカットでネコ目。背丈は平均的でその明るい表情が彼女の活発な性格を強調していた。
「千春ちゃんに仁!話は聞いたよ!私も仁のチームにスーパー助っ人マンとしてそのチームに入れさせてもらうよ!」
更新日:2011-12-25 20:38:05