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最高のプレゼント

チャン・ナヨンは、役柄とは言え、この数か月間ジュノと、恋人として一緒に
過ごした撮影が、もう残すところ数日だと言うことに、酷く落ち込んでいた。
俳優や女優は、仕事の度に、疑似恋愛を体験するわけだが、ナヨンは
今まで、こんな気持ちにはならなかったのだ。

「オッパ(お兄さん)が、好きで好きで堪らない・・・
ああ、どうしたら良いの?!」

ナヨンの気持ちは、差し迫っていた。


ジュノからは、スクリーン・クォーター制度のデモの日に、思いがけず、会えた
日から、何の連絡もなかったが、美秋はジュノの誕生日に向けて、準備を
進めていた。
予定としては、参加者全員が浴衣を着て、美秋の家の庭に集まり
料理を食べ、花火をして、金魚すくいや、怖い話をする。
と言うもので、美秋は毎日、店から真っ直ぐに帰り、庭の飾り付けや
料理の準備に頑張っていた。
そして、眠る前・・・

「どうか、ジュノさんの新作が、滞りなく、また素晴らしい作品となって
撮り終えることが出来ますように・・・そして、どうか、今年こそ、彼の
お誕生日を、二人でお祝いすることができますように・・・ほんの少しでも
良いんです。ひと目でも良いので、会えますように・・・」

心で念じ、ピンクのコスモスで、花占いをしようとする。
しかし、美秋は、花が可哀想なので、花びらはむしらない。
マジックで、ほんの少し印を付け、順番に指で追って行くのだ。
さっき、アザミゲシでやった時は、会えないで終わったので、今度は
会えないから、行こうと思った。

「会えない・会える・会えない・会える・・・会えない・会える、やった~
会えるって・・・」

しかし、急に空しくなって肩を落とした。


準備も万端に整った誕生日の前日、ジュノから電話があった。

「ミア・・・」
「あ、ジュノさん・・・おつかれさま」
「ん~、あ、何してた?」
「え、あ、別に何も」

誕生会の最終チェックとは言えず、焦った。

「明日、打ち上げなんだ・・・」
「・・・・・」

美秋の心が、急にしぼむ。

「だけど、夜までで終わるから、それからミアキのとこに行く・・・大丈夫か?」
「・・・うん・・・うん、大丈夫だよ、待ってる、待ってるから」
「OK~、じゃあ、誕生日プレゼントで、欲しいものがあるんだ」
「な~に?」

美秋は、彼は何でも持っているのに、他に欲しいものなんてあるのかと
思っていた。

「う~ん、会った時に言うよ」
「え、何ぃ?気になるから言って・・・明日までに用意しなくちゃならないし」
「ものじゃなくて、ミアキにして欲しいこと」
「え~、いやらしいこと~?」
「全然!」
「ホント?」
「うん、ホント・・・じゃあ、明日な」

一方的に電話は切れたが、美秋は、嬉しかった。
ただただ、嬉しかった。



翌朝、美秋が出勤すると、店の前に、花の仕入れ担当であるトウォンが
立っていた。
いつもは、花を店の中に入れて帰るのだが、時々、伝えたいことが
あると、こうやって、美秋を待っているのだった。
トウォンは優しげな笑顔を持つが、実際の彼を良く知る者はいないほど
ミステリアスな人物だ。
花屋の大手チェーン店の三男坊だと言う噂もあったが、この店とのつき合いは
美秋よりも古く、ヨンエは、彼をとても信頼しているのだ。



更新日:2009-04-23 08:43:33

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