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ライブ
会場がまだざわざわと騒々しい中、全体の照明が一旦暗くなる。
それに合わせて観客の声も静かになる。ならざるを得ない。
真っ暗なステージの上、少女たちの影が動く。
パッとステージの照明が点いた時には、アイドル『AKB48』がそこに立っていた。
大歓声の中、音楽が流れ始める。
少女たちのパフォーマンスが始まった。
それに合わせて観客のボルテージも一気に上がる。
今までバラバラに動いていた無数のサイリウムが、一体となる。
まるで一つの生き物のようだ。
横にいる自分でさえも気圧されそうな勢いなのに、舞台にいる少女たちはそれを真正面から受け止める。
同時に始まる激しいダンス、しかし表情は笑顔のまま崩れない。
めまぐるしく舞台を移動し、所々アドリブを入れている。
立ち位置なんて関係ない。
1人1人が自分なりの『AKB48』を表現していた。
気が付くと体が震えていた。
グッと拳を握りしめていた。
鼓動が高鳴った。
「これが……AKB48……」
自分も同じ名前のアイドルグループに入っているとは信じられなかった。
「違う……私が所属するアイドルとは別物、別次元」
一つのアイドルグループ『AKB48』にただただ感動するしかなかった。
「おお! たかみな!」
「あ、大島さん」
ライブが終わると、高橋のもとへすぐに大島はやってきた。
「どうだった? うちらのライブ」
「とっても感動しました。なんて言えばいいのか……」
高橋はあまりの感動に言葉を詰まらせる。
返事を待たずに大島がグッと顔を近づけて言葉を挟んだ。
「とりあえず元気は出た?」
「はい! とっても! ハツラツです!」
「ならば、何も言わなくてよろしい!」
そう言って笑いながら大島は楽屋の方へスキップしていった。
時間が経ってもなお高橋は興奮が冷めなかった。
そんな体を休ませるように廊下のベンチに座っていると、シャワーを終えて着替えてきた前田がやってきた。
「お、たかみな」
「あっちゃん」
「見てたんでしょ? 少しは気分転換になった?」
「すっごく良かったよ」
そのまま前田は高橋の隣に座った。
「これ、食べる?」
前田は手のひらに乗った、紙で包まれたキャンディーを差し出した。
「お、ぷっちょだ。ありがと」
高橋はそれを手に取ると、包み紙を開けて口の中に放り込んだ。
包み紙はポケットにしまった。
「私さ……あっちゃんに謝らないといけない」
「何で?」
「実はさ、未来に来る前あっちゃんと喧嘩しちゃったんだよね」
「へえー。私がたかみなと喧嘩なんてあったっけ?」
「私が悪いんだよ。私がAKBでやっていける自信ないって言ったらあっちゃん怒っちゃって」
「あー、あれか。覚えてるよ」
「え? 覚えてる?」
「うん。覚えてる。あのあとたかみなは未来に行ってるのか……なるほどね……」
高橋の言葉を聞いて前田は考えていた。
自分の記憶と、過去からやってきた高橋の記憶が共通していることを。
そしてタイムスリップした高橋がいる世界と自分のいる世界が共通していることに気付いた。
つまり今現在高橋が普通に自分の世界にいるということから導き出される答えは一つしかない。
「……よかったね。大丈夫だよきっと」
「え? 何が?」
「きっと過去に帰れるよ。もっとよく思い出して。その喧嘩の後とかさ」
「喧嘩の後……」
高橋は必死に思い出していた。
元々ほとんどタイムスリップ直前の記憶が無かった。
しかし、時間が経つにつれ、記憶はだんだん戻ってきていた。
前田との喧嘩も忘れていたものだったが、今ははっきりと思い出せている。
それを思い出せるのならさらにタイムスリップ直前の記憶まで思い出せるはずだ。
「喧嘩して……どうしたっけ? ……えーと確か泣いてて……」
かなりのところまで思い出してきた。
「泣き顔を見られたくないからって……適当にドア開けて……」
そしてついにそのときがやってきた。
「ああ!」
未来にやってきて一番の大きな声が高橋から発せられた。
「思い出した!?」
「うん。思い出した。あっちゃんありがとう!」
前田にお礼を言うと高橋は走り出した。
探すのは戸賀崎支配人。
「戸賀崎さん! 車出してください!」
「ま、また?」
戸賀崎は突然高橋に迫られ最初は驚いていたがその必死な形相を理解し、すぐに車を出した。
「どこまで?」
「劇場までお願いします」
車は動き出す。
劇場へ向けて。
全ての始まりへと向けて。
タイムスリップまでの出来事を完全に思い出した高橋が向かうは一つ。
「あれだ……あのロッカーがこっちの世界にあれば……」
高橋を吸い込んだロッカー。
もう一度両者が相対そうとしていた。
それに合わせて観客の声も静かになる。ならざるを得ない。
真っ暗なステージの上、少女たちの影が動く。
パッとステージの照明が点いた時には、アイドル『AKB48』がそこに立っていた。
大歓声の中、音楽が流れ始める。
少女たちのパフォーマンスが始まった。
それに合わせて観客のボルテージも一気に上がる。
今までバラバラに動いていた無数のサイリウムが、一体となる。
まるで一つの生き物のようだ。
横にいる自分でさえも気圧されそうな勢いなのに、舞台にいる少女たちはそれを真正面から受け止める。
同時に始まる激しいダンス、しかし表情は笑顔のまま崩れない。
めまぐるしく舞台を移動し、所々アドリブを入れている。
立ち位置なんて関係ない。
1人1人が自分なりの『AKB48』を表現していた。
気が付くと体が震えていた。
グッと拳を握りしめていた。
鼓動が高鳴った。
「これが……AKB48……」
自分も同じ名前のアイドルグループに入っているとは信じられなかった。
「違う……私が所属するアイドルとは別物、別次元」
一つのアイドルグループ『AKB48』にただただ感動するしかなかった。
「おお! たかみな!」
「あ、大島さん」
ライブが終わると、高橋のもとへすぐに大島はやってきた。
「どうだった? うちらのライブ」
「とっても感動しました。なんて言えばいいのか……」
高橋はあまりの感動に言葉を詰まらせる。
返事を待たずに大島がグッと顔を近づけて言葉を挟んだ。
「とりあえず元気は出た?」
「はい! とっても! ハツラツです!」
「ならば、何も言わなくてよろしい!」
そう言って笑いながら大島は楽屋の方へスキップしていった。
時間が経ってもなお高橋は興奮が冷めなかった。
そんな体を休ませるように廊下のベンチに座っていると、シャワーを終えて着替えてきた前田がやってきた。
「お、たかみな」
「あっちゃん」
「見てたんでしょ? 少しは気分転換になった?」
「すっごく良かったよ」
そのまま前田は高橋の隣に座った。
「これ、食べる?」
前田は手のひらに乗った、紙で包まれたキャンディーを差し出した。
「お、ぷっちょだ。ありがと」
高橋はそれを手に取ると、包み紙を開けて口の中に放り込んだ。
包み紙はポケットにしまった。
「私さ……あっちゃんに謝らないといけない」
「何で?」
「実はさ、未来に来る前あっちゃんと喧嘩しちゃったんだよね」
「へえー。私がたかみなと喧嘩なんてあったっけ?」
「私が悪いんだよ。私がAKBでやっていける自信ないって言ったらあっちゃん怒っちゃって」
「あー、あれか。覚えてるよ」
「え? 覚えてる?」
「うん。覚えてる。あのあとたかみなは未来に行ってるのか……なるほどね……」
高橋の言葉を聞いて前田は考えていた。
自分の記憶と、過去からやってきた高橋の記憶が共通していることを。
そしてタイムスリップした高橋がいる世界と自分のいる世界が共通していることに気付いた。
つまり今現在高橋が普通に自分の世界にいるということから導き出される答えは一つしかない。
「……よかったね。大丈夫だよきっと」
「え? 何が?」
「きっと過去に帰れるよ。もっとよく思い出して。その喧嘩の後とかさ」
「喧嘩の後……」
高橋は必死に思い出していた。
元々ほとんどタイムスリップ直前の記憶が無かった。
しかし、時間が経つにつれ、記憶はだんだん戻ってきていた。
前田との喧嘩も忘れていたものだったが、今ははっきりと思い出せている。
それを思い出せるのならさらにタイムスリップ直前の記憶まで思い出せるはずだ。
「喧嘩して……どうしたっけ? ……えーと確か泣いてて……」
かなりのところまで思い出してきた。
「泣き顔を見られたくないからって……適当にドア開けて……」
そしてついにそのときがやってきた。
「ああ!」
未来にやってきて一番の大きな声が高橋から発せられた。
「思い出した!?」
「うん。思い出した。あっちゃんありがとう!」
前田にお礼を言うと高橋は走り出した。
探すのは戸賀崎支配人。
「戸賀崎さん! 車出してください!」
「ま、また?」
戸賀崎は突然高橋に迫られ最初は驚いていたがその必死な形相を理解し、すぐに車を出した。
「どこまで?」
「劇場までお願いします」
車は動き出す。
劇場へ向けて。
全ての始まりへと向けて。
タイムスリップまでの出来事を完全に思い出した高橋が向かうは一つ。
「あれだ……あのロッカーがこっちの世界にあれば……」
高橋を吸い込んだロッカー。
もう一度両者が相対そうとしていた。
更新日:2011-12-27 02:48:33