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憂鬱な始まり

『Never give up』なんて言葉があるけど、現実には無理なものは無理な時もある。
ホントのホントに絶望的な状況に立たされたら、諦めたくもなる。
努力じゃどうにもならないことなんて沢山ある。

努力すれば夢は叶う、努力は報われる、なんて綺麗ごとを言う奴がいるならぶっ飛ばしてやりたい。
努力なんてクソ食らえだ!

高橋みなみは自分の人生において、一番の苦境に立たされていた。
歌手になるという夢を叶えるためにアイドルなり、ここまで頑張ってきた。
だがその夢は今にも崩れようとしていた。

始めは怪しく思っていたAKB48。
もっとメジャーなグループに入りたかった。
それでも、オーディションに合格したからにはやるしかない。
絶対にデビューしてみせる、そう気合を入れた。

厳しいレッスンが始まった。
遅刻で仲間が一瞬でクビにされる世界。
恐怖さえ感じた。
同時に本気でやるしかないことを改めて実感させられる。

歌には自信があったが、ダンスは全くできなかった。
毎日居残りで練習する日々。
劣等生と呼ばれても練習するしかない。
ひたすら努力の日々。
人生最大の努力の日々。

しかし結果はついてこない。
自分が不甲斐ないばかりに、振り付けが変わることさえあった。
何度も泣いたし、辞めようとも思った。

それでも私は、諦めなかった。

厳しいの一言では片づけられないような地獄のレッスンを経て、ついに初めての公演までたどり着いた。

やっと、報われるんだ。
努力してきてよかったと思えた。


……が、それでも駄目。


観客7人という絶望的な光景。
自分の夢見る輝かしい世界とはかけ離れた状況。
神様がいるのだとしたら、あまりに残酷だ。

もう無理だ。
諦めよう。
芸能界ってのはこんなにも厳しい世界だったんだ。
私は十分に頑張った。
辞めてもいい理由は沢山ある気がした。

そう思いながら、布団に入るも、翌日の朝には劇場へと足を運ぶ毎日にうんざりしていた。

更新日:2011-12-02 01:54:31

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