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8 恋の話

警察が事故処理をする間、行く手を塞がれた運転手たちは、

車から出てタバコを吸ったり、携帯片手になにやら話しこんでいる。

結衣はハンドルを握ったままの誠一郎に、『ポロン』の話や、

少し前に借りたDVDの話など、あえて明るい話題を振り続けた。

誠一郎はしばらく聞いてくれていたが、止まったまま2時間近くが経過し、

大きくため息をつく。


「橋本さん」

「はい」

「待ちあわせは、何時だったの?」

「8時です。でも、今日はやめました」


時計はすでにその8時を回り、ようやく車線は1つだけ開放されたが、

不満だらけの車が殺到し、警察の指示で少しずつ動き出す。


「そうだったんだ。それは申し訳なかったな。
僕が車で送るなんて言わなければ、こんなことには」

「そんなこと言わないでください。しかたないですよ。
事故が起こるなんて、誰にだって予想出来ませんから。
大丈夫です、また予定は立てたら済むことです」


誠一郎の手前、結衣はそう答えることしか出来なかったが、

太郎は明日、朝7時前にホテルを出ることが決まっていて、

埼玉のチームと試合をした後、神戸へ戻ると電話で語ってくれた。



『仕方がないな、事故じゃ……』

更新日:2012-01-11 21:17:59