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7 東京の話

結衣は太郎が東京へ遠征に来る日を、カレンダーに丸をつけ、楽しみにしていた。

チームと一緒に行動するため、会えたとしても食事くらいなのはわかっていたが、

それでも同じ場所にいることが出来ると思うだけで、気持ちが高ぶっていく。

混雑する電車も、それを乗り越えたら太郎が来るのだと思い、

足を踏まれても、イライラすることなく、営業部に到着する。


「おはよう、平田君」

「なにのんきに挨拶しているんですか。大山部長、朝からご機嫌斜めですよ」

「あれ? 何かあったっけ、今日」

「緊急ミーティングでしょ、携帯に連絡が入りませんでしたか?」

「……ウソ!」


結衣は慌てて携帯を開くが、そんな知らせは何も入っていなかった。

周りを見てみるが、緊急といえる雰囲気はどこにも感じられない。

しかも、考えてみたら、その緊急メールは誰から入るのかも検討がつかなかった。


「ウソでしょ、それ」

「そうですよ、何慌てているんですか」

「ちょっと平田君!」


結衣は自分をからかった創に対し、どうしてそんなことをするのかと訴えかけた。

しかし、その声は、前にいる大山部長の声に、消されてしまう。


「川上! 君はどういう了見で、そんなことを約束してきたんだ」

更新日:2012-01-05 21:31:06