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5 副社長の話

安西は結衣よりも1つ年上で、営業マンとしてはなかなかの男だった。

結衣は、担当を変わりたくないと訴えてみたが、大山には受け入れられず、

結局言われる通り書類をまとめ、安西と社員食堂の隅で打ち合わせをする。


「まぁ、いいですよ、資料だけくれたら。契約は済んでいるんでしょ?
あとは僕の方でやりますから」

「あの、安西さん。担当の鳥谷さんは……」

「橋本さん、あなたに指示を受けるほど、僕は営業の素人じゃないです。
どうせあなたが抱えていても、どこかでギブアップしたはずだ。
今のうち、渡しておくのが正解だと思いますよ」


始めから結衣には大きすぎる仕事だと、安西は鼻で笑うような仕草を見せた。

結衣は大山が自分の想いを受け入れなかったことに、悔しさが膨らんでいく。


「隅っこに座っているんだから、
ちまちました相手と、のんびり仕事をしてください」


安西はそういうと資料を全て抱え、席を立った。

黄色いファイルにまとめられた資料は、

全て、結衣のために太郎が残してくれたものだ。

結衣は自分だけではなく、太郎も軽く見られた気がして、

さらに気持ちを重くした。





「冗談じゃないわよ、何、その話!」

「うん……」

更新日:2011-12-19 20:15:20