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創の肩に太郎が触れ、グッとつかんだ。太郎がどんな思いでそう告げたのか、

肩にかかる力で、創には全てわかる気がする。


「二人とも、時間があるのなら、練習見ていくといい」


結衣は太郎の声にしっかり頷くと、自分を見ている愛にも頭を下げた。

愛はそれに軽く返礼すると、部員たちとトレーニングルームへ向かう。

太郎はそれに続くように、グラウンドへ向かって走り出した。





創と結衣は、グラウンドの横にある観客席に座り、

『ERGORA』サッカー部の練習風景を、しばらく見続けた。

太郎のホイッスルが何度も鳴り、部員たちはダッシュを繰り返す。


「葛西さん、どうして受けたんだろうな……こんな仕事」


創のつぶやきに、結衣はグラウンドの真ん中で、

ホイッスルを吹き続ける太郎をじっと見た。

グラウンドには監督の衣笠も姿を見せ、その周りには2人コーチらしき人が立つ。

選手を呼び、あれこれ指示を出すのはその二人で、

太郎は何も言うことなく、ボールを集めたりラインを引いている。


「合宿所付きのコーチなんて、雑用係もいいところなのに……」

更新日:2011-12-13 19:53:26

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