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4 現実の話

結衣は、太郎を名前で呼ぶ女性の顔を見た後、

以前、舞子が見せてくれた写真を思い出した。

舞子とその彼だった上条、そして太郎と愛。

二人がただの友達ではないことも、わかっているつもりだった。


「先に出てくれたから、準備かと思ったのに、何をしているの?」


愛の冷たい視線と言葉に、結衣はすぐ太郎のことを見た。

太郎は少し口元を緩め、結衣の不安そうな表情をほぐすような笑顔を見せる。


「橋本、ごめんな。ここまで来てくれたのに、これから練習なんだ。
ゆっくり話せなくて申し訳ないけれど、また電話……するから」

「……はい」


創は、少し寂しげに返事をした結衣の顔を見た後、

二人をじっと睨んでいる愛の方を向いた。

その後ろには、エースの佐野が姿を見せる。

佐野は太郎と愛の表情を交互に見た後、すぐに他の部員たちの歩みを追い抜き、

先にトレーニングルームへ入っていく。


「創……」

「はい」

「橋本を、東京へ無事に連れて帰ってくれ、頼んだぞ」

「葛西さん……」

更新日:2011-12-13 19:53:14