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3 出がらしの話
その日の夜、結衣に電話をかけたのは太郎の方だった。
外出できると思っていたが、許可が下りなかったと謝罪する。
「じゃぁ、会えないんですか、明日」
『ごめん。外出の許可が下りなかったんだ。明日ミーティングになってしまって。
こっちへ来たばかりなのに、いきなり欠席も出来なくてさ』
太郎は、本当に申し訳なさそうな声を出し、何度も『ごめん』を繰り返した。
結衣はそんな太郎の謝罪に、ため息が出そうになる気持ちをグッとこらえ、
あえて明るい声を出し、それは仕方がないことだと逆に励まそうとする。
「仕方ないですよ、仕事ですから。それに、今回は『棚からぼた餅』なんです。
会社のお金で、葛西さんにも会ってこようだなんて、ずうずうしいってことですよね」
『あのさ、グラウンドに来てくれないか?』
「グラウンド? 私なんかが、行ってもいいんですか?」
『あぁ……もちろん。俺も橋本に会いたいし……』
『会いたい』
結衣はその言葉を聞き、じわりと浮かぶ涙を、
そばにあったティッシュでそっとぬぐった。
外出できると思っていたが、許可が下りなかったと謝罪する。
「じゃぁ、会えないんですか、明日」
『ごめん。外出の許可が下りなかったんだ。明日ミーティングになってしまって。
こっちへ来たばかりなのに、いきなり欠席も出来なくてさ』
太郎は、本当に申し訳なさそうな声を出し、何度も『ごめん』を繰り返した。
結衣はそんな太郎の謝罪に、ため息が出そうになる気持ちをグッとこらえ、
あえて明るい声を出し、それは仕方がないことだと逆に励まそうとする。
「仕方ないですよ、仕事ですから。それに、今回は『棚からぼた餅』なんです。
会社のお金で、葛西さんにも会ってこようだなんて、ずうずうしいってことですよね」
『あのさ、グラウンドに来てくれないか?』
「グラウンド? 私なんかが、行ってもいいんですか?」
『あぁ……もちろん。俺も橋本に会いたいし……』
『会いたい』
結衣はその言葉を聞き、じわりと浮かぶ涙を、
そばにあったティッシュでそっとぬぐった。
更新日:2011-12-07 19:38:21