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「平田さん! ちょっと……」

「何ですか……」


結衣は、その創の迷惑そうな返事に対し腹を立て、持っていた書類で頭を叩いた。

創は苦々しい表情になり、結衣を睨みつける。


「いい加減にしてください。
そんな態度でいるのなら、これ以上一緒に行動出来ませんから。
社長の息子だろうと、総理大臣の息子だろうと……出来ません!」

「ん?」

「『BOND』との交渉に入るまで、どれだけ大変だったと思っているんですか?
あなたのそんな態度で、契約が破棄になったら……」


太郎との思い出が結衣の中に蘇り、

プレゼン前に手を握ってくれた、あの時間を思い出した。

せっかく前向きに動きだした仕事が、

創の態度で振り出しに戻ってしまっては、泣いても泣ききれない。


「破棄になったら、なんなんっすか?」

「なんなんっすかって……」

「別に、『ERGORA』は俺たち二人、どうだっていいと思ってますよ」


創が見せた、どこか寂しそうな顔を目の前にし、

結衣はそれ以上強いセリフが出なくなる。

二人の前でエレベーターが開き、創は何もなかったかのように乗り込み、

結衣も慌てて後に続いた。

更新日:2011-11-29 19:50:21

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