• 118 / 377 ページ
結衣はとりあえずバッグを置き、あらためて花束と小瓶を確認した。


「これを副社長が置いていったってことですか?」

「そうなんです。急な入院で迷惑をかけたからと言われてました。
みなさんもって『フレーバーティー』を置いていってくれて」


船橋はそういうと隣のデスクに置いた、茶色の缶を指差した。

結衣はそれを確認すると、カゴの中に小さな手紙が添えてあるのを見つける。


「橋本さん、知ってますか? そのお酒」

「お酒? これ、お酒なんですか?」

「そうですよ、やだもう、何も知らないんですね」


船橋の横にいた女子社員が、誠一郎が置いていった小瓶は、

山形の地酒店が作った大吟醸で、契約をした人たちじゃないと買えないものだと、

情報を付け足した。限定品で、東京の店にはほとんど出回らず、

ネットオークションではとんでもない高値をつけたこともあるという。


「小瓶ってところがおしゃれですよね、
あぁ、もう……朝から素敵な人を見ることが出来て、なんだか幸せ」


結衣は誠一郎がくれた紅茶を見ながら、彼の話に華を咲かせている社員たちの横で、

小さな封筒をそっと開いた。



『僕の快気祝いを、一緒にしてくれませんか』


更新日:2012-01-23 21:29:33

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook