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ペットショップの店員には、誠一郎は売れない音楽家として通っていた。

結衣は、そんな調子で話ができるのなら、

本当にたいしたことではないのだろうと少し安心する。

その話は、次の日、『BOND』本社に向かうと、

部長の鳥谷がより詳しく説明してくれた。


「そうなんですか、副社長と一緒の犬を」

「はい、本当に偶然、同じ犬をかわいがっていたようです。
そこで副社長が入院された話を聞いたものですから」


鳥谷は、誠一郎が昔から持病をいくつか抱えていて、

何度か大きな手術をしたことを教えてくれた。

アメリカに7年行っていたのも、仕事の勉強もあるが、

その道の名医を紹介してもらったための理由もあった。


「新規開店のことで、ここのところずいぶん仕事に力を入れていましたので、
少し疲れが出たのでしょう。ここはしっかりと休んで欲しいと、
私たちの方で強く入院を勧めました」

「そうだったんですか」

「ご心配をおかけして、申し訳ありません。
『フワロン』さんとの取引はしっかりと継続し、売り上げのデータも、
しっかりと見ていくつもりです」

「ありがとうございます。年が開けましたら新商品も出ることが決まっていますので、
ぜひぜひ、そちらの方も……」

「それは、また、別のお話ですね」

「はい!」

更新日:2012-01-17 21:17:37

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