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第8回目


 チャンチャラララランチャララ……

「いっくでーっ。キンキューッ!」
「ナマー」
「ホー……れん……」
「ソウーッ! ……だあっ」

 緊急生放送ですよ。

三月兎「みんな合わせようや~っ。バラバラやんか。この人数でこれだけ合ってないとボクも空気読めてないみたいで嫌なんや、ひとり張り切ってるってイタイやろーっ」
眠り鼠「すみません、帽子屋のナマってさぁ、変なふうに聞こえちゃって」
三月兎「キミだけや!」
帽子屋「ちょっと待て。今『ほうれんそう』になってたぞ」
三月兎「ァア?」
眠り鼠「報告・連絡・掃除……だっけ? ほうれんそうって」
三月兎「なにナチュラルに動かそうとしてるんや。ほうれんそうはおかしい! 『緊急生ホウレン草』ってなんや! それほど重要な使命が生のほうれん草のいったいどこにあるっちゅーんやーっ!」
帽子屋「誰か貧血なんじゃないか」
三月兎「そうそうそう、鉄分を取るにはほうれん草が…… って違うわーっ!」
眠り鼠「え、だから、いつも報告・連絡・掃除を怠らないようにと……」
帽子屋「確かに大事だな」
三月兎「緊急! 生! 空気読めって言ってるやろー。それ以前の問題や。誰や余計な言葉入れたのはっ。なァ、ねずみ君! あと、最後の違うでー」
眠り鼠「えーと、急を要する、生でする、報告と連絡と……大掃除?」
三月兎「正しい答えがわからないんやな」
眠り鼠「でも、掃除じゃない?」
三月兎「ンー、ま、そうやな。大掃除や。この場合はな……ハイッ、みなさんコンチ!」
眠り鼠「こんにちはー」
帽子屋「おう」
三月兎「始まりますよ、<きらきら星放送局>、マッドティーパーティのティーパーティー! パーソナリティーはお馴染み三人でーす。今回は、場所移動直前のさよなら放送でっす! 予告なしでお送りしておりまっす! おっと、さよなら言うても場所とやで。この番組はまだまだ続きますっ」
帽子屋「チッ、面倒くせぇな。理由は?」
眠り鼠「そうそう、理由は? まだオレ知らないんだけど。ただ、なんとなく……もしかしたら訊いちゃいけないのかなーとか……」
三月兎「それなんやけど。いやいや、ええやろ。別に。ボクが聞いたんは、機械になァ、なんや問題があるとかで。やりにくくてかなわん、と。新しいんやけど合わないとか、なんやその話らしいで。番組、未公開の分も合わせるとずいぶん長いしなァ」
帽子屋「合わせなくても長いしな」
三月兎「そやな」
眠り鼠「ああ、そゆこと? 録音して編集してから放送だから、テープのびるのかなぁ。こっちは依然として古いままだし、それは合わないかもな。だいたい長すぎるっ」
三月兎「キミが変な話ばっかするからやっ」
眠り鼠「ええっ、オレ? オレのせい? それ言ったらうさぎのほうがよっぽどおしゃべりじゃん。まきでお願いしまーす。まきで…… 焼いちゃって……」
三月兎「焼いちゃってっ? ねずみ君、今、恐ろしいこと言うたでっ」
帽子屋「どちらかといや、ねずみのほうがうまそうだな」
眠り鼠「ええっ」
三月兎「いやいやいやっ、ボクも結構うまいでっ?」
眠り鼠「えええっ、食べられたいの?」
三月兎「そやないけど、悔しいやーん、選ばれないとォ」
眠り鼠「そうか……オレら片付けられちゃうのか……」
帽子屋「食いたいとは言ってない」
三月兎「違う! 違いますーっ! それじゃ後々続けられへんやろうが! そやなくて、今までのまとめや、まとめ! 感謝をこめてきれいにしようってわけや、『たつ鳥あとを濁さず』のようなことをしたいわけや!」
帽子屋「ハッ」
三月兎「なんや……帽子屋、なんか文句でもあんのか?」
帽子屋「今までさんざん濁してきただろうが。今さら何が『きれいに』だ」
三月兎「つっ!」
眠り鼠「うわあー」
三月兎「ボ……ボクのせいと違うもん……ほら、茶柱立っとるもん……濁ってないもん」
帽子屋「無理やり立てようとするな」
眠り鼠「うわ、汚い! カップに指つっこまないで! そーゆーことでもないし。あー、ほら、泥の中で育つ蓮は天できれいな花を咲かせるという、つまり…… 暗闇でこそ見える光というか……濁るもんはもうしょうがない! 飛べればいいんだ!」
三月兎「わが道を行くようなことを言うてるわりに、キミが見てるのは未来やないな。夢やね、その目は」
眠り鼠「眠りながら未来も見える」
帽子屋「超能力者じゃねえか」
三月兎「眠るんやないで。今日はまとめのために長い時間を取ってあるんや。全部グウグウグウで埋めるわけにいくか?」
眠り鼠「らしくていいと思うけど。……じゃあ、マッドティーパーティーらしく、パーティーでもしようか。紅茶もあるし。まずは乾杯でも」

更新日:2011-11-17 22:30:48

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