• 2 / 100 ページ

FAMASのテレサ

「はっ!はっ!はっ!」

一人のトレジャーハンターが走っていた。
ヘッドセットを付け、真っ黒いバラクラバの前面に骸骨を描いた物を被っている。
灰色を基調とした長袖の戦闘服の上からタクティカルベストを着ており、各種手榴弾やロープなどを吊っていた。
カーゴパンツの左臀部にはガスマスクが入ったポーチを下げ、右には9mm機関けん銃を下げ、頻りに後ろを振り返りつつも、足を止める事無く、走る。
右手にはFAMASと呼ばれるブルパップ式のアサルトライフルを持っているが、今では撃つべき弾は無く、空になった30発箱型弾倉が差さっているだけだった。
戦乱期と過去の大戦争時代の大きな遺跡。
そして、今回の目的は、この遺跡に有るらしい古代の宝を目的にやって来たのだ。
しかし、その遺跡は野生の飛龍が居り、それが想像よりも手ごわく、一人では手に負えなく、撤退している最中なのである。
嘗てより、飛龍と言う生き物は人間やエルフと並んで知能が高く、子供の頃から育てれば、人間と良いパートナーと成る。
勿論、それは非常に手間のかかる事で、軍や大きな組織で無い限りは飛龍は持っていない。
口から吐く炎は非常に強き、下手をすれば、岩をも溶かす火力を持っているのだ。
幸い、足が遅く、狭い遺跡の中では飛べないので、追い付かれなければ、逃げ切れる。
トレジャーハンターは迷わない様に置いておいた発光石を辿って走る。
正確に言えば、発光石ではなくケミカルライトと呼ばれる物だ。
発光石とは天然の水晶に魔術師が魔力を込めた、長時間(短くて1日、長いと1年以上発光する物が有る)点灯するライトで、魔力を込め直せば何度も使えるライトの一種で主に、登山や、洞くつ探検等、誘導灯や目印などに使われる物だ。
しかし、このケミカルライトは発光石よりも安価(発光石だと小さい物でも1シルバーする)で尚且つ軽量なので貧乏なトレジャーハンターが使っている。

「きょ、今日はヤバかったっす」

トレジャーハンターは入り口を飛び出る。
背後を振り返り、飛龍が追って来ない事を確認するとその場にしゃがみ込み、溜息一つ。

「安心するのはまだ早いわ、童子」
「え?」

背後を振り返った瞬間、大きな黒い影が降って来た。
飛龍だ。

「ック!!」

更新日:2011-11-28 23:14:35

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook