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第2章

「お母さん・・・どうしたの。」
家に帰ると玄関で倒れているお母さんの姿。
ゆすぶってみても返事はなく顔には生気が無い。
「うそ、うそだ!!」

お母さんは救急車で運ばれたがほどなく死亡した。
何度呼びかけても返事をしない母。

僕の・・・せいだ。



―リリリリリリ

耳元で目覚ましの音が鳴り響く。
僕を悪夢から引っ張り上げてくれる音。
そして逃げることのできない現実へと連れ戻す音。

重たい体をゆっくり起こすと洗面所へと向かう。
顔を洗いヒゲをそる。
鏡に映るのはだいの大人。
だけど僕の心はあの時から止まったまま。

時計に目をやると短針は8の数字を指している。
食パンを焼き手早く朝食を済ませるとスーツに着替え家を出る。

そこまでは昨日と同じ普段通りの生活。
だけど今日は少し違った。
玄関の扉を開けると途中で何かに引っかかった。
空いた扉の隙間から外を覗くと玄関先にはダンボールが。



『おめでとうございます。』
ダンボールにはそう書かれた張り紙が。
のんびりしていれば会社に遅刻してしまうのは分かっているのだが
なぜか箱の中身に引き寄せられるようで僕はダンボールを
家の中に持ち込み封を切った。

『あなたの望むものはなんですか?』
箱の中にはそう書かれた紙切れが一枚。
僕は迷わず『お母さん』と書いた。
すると紙は一瞬のうちに黒く染まり白字で
『勤勉(ディリジェンス )』の文字が現れた。
僕はその紙を持ったまま玄関の扉を開ける。
その先は見知らぬ個室だった。

こうして僕はゲームに参加することとなったのだ。



部屋に入るとひとりでに扉は締まり見知らぬ狭い部屋に僕一人だけ。
でもなんだか落ち着いた。
もう一度紙を見てみる、すると『ルール』の文字が浮かび上がった。
裏返すと見たことのない記号で埋めつくされている。
しかし次の瞬間、その記号から情報がどんどん脳内に流れ込んでくる。
僕はその記号が読めるようになっていたのだ。

しばらくするとモニターに人物が映し出される。
『みなさんこんにちは。』

更新日:2011-11-08 23:44:31

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