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夢の中の夢

夢の中で眠ってしまえば、現実には起きているのだとか、言われているけど…

『ない、いくら何でも、これはないわ。』
何とは無しに、分かる。
自分の感覚のない腕、足。
そして…言葉は思いの内に消えて、現れた声音は、猫のもの。

『…』
何故?とも、嘘でしょう?とも言えず、発する音は、猫の鳴き声。

しかも、自分の意志とは関係なく、海の真っ只中―しかも僅かしかない岩場―で、猫の腕は、魚をくわえた海鳥を捕まえようと奮闘する。


ああ、落ちてしまう、危ない
と、危険視すると、猫も大人しく…する訳もなく、以外に諦めが悪かった。

海鳥と奮闘し始めてから、どれだけ経ったか。
私は、冷静に物を考えることが出来ている不思議さに、頭を捻った。

視点は猫。
しかし、自分が勝手に動かせる体ではない。
嫌な予感しかしない私は、周りの海原を見渡す。
もし、この広々とした海に猫が身を投げたとしたら、私はどうなるのだろう?

死ぬのだろうか?
それとも、そこで目が覚めるのだろうか?

どちらにしろ、良い気分になれない。
そんな折に、どこからか叫び声が聞こえた。

 誰々が倒れただの、何だのが響いた後、海に飛び込む音に続いた衝動には、驚愕した。
頚根っこを捕まれた私…ではない、猫。

私の視線から見上げると、金髪のイケメンが視界に入る。
あ、ダメ。
どっかの馬鹿を思い出しそうで、好きになれそうにないわ。
今は改めて、猫の成りで良かったと、心の底からそう思った。


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更新日:2011-11-02 21:24:00

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