その青年は、きっと真面目な人だったのだろうと思う。
とても、とてもお気の毒な結果となってしまったけれど……。


「〇〇さん、こんにちは。　今日はどうしました？」

「ＨＩＶ検査をしてもらいたいと思いまして。」

「何でしようと思ったの？」

「…パートナーが変わったので。」

「そう。……それで、相手は男？　女？」

えっ！？　予期せぬ質問に驚いたのだろう。　一瞬言葉を詰まらせながら、

「…お、女です。」

「そう。……検査はＨＩＶだけで良いの？」

「他に考えられるものがあれば、それもお願いしたいのですが。」

「そう。……それで、相手は日本人？　外国人？」

「……もちろん、にっ、日本人ですよっ！」

「そう……。」

ドクターが、検査項目の話を色々とした後、

「それじゃ、検査を出しておきますからね。　採血してお帰り下さいね。」

「…はい、お願いします。」

患者さんは、やれやれというように立ち上がった。……の、せつな！！

「それで、相手は一人？　複数？」

「…………っっ、一人ですっ！！」


ドクターが、根拠のない質問をしている訳ではない、ことは分かっている。
けれど、その余りにもあからさまな質問に、患者さんが何だかお気の毒で……。

保健所ならば、ＨＩＶ検査は無料で匿名にて行える。
それなのに、保険が使えず自費でしなければならないわ、衝撃的な質問を浴びせられるわ……。

患者さんは、どんな表情をして診察室を出て行ったのだろう？
散々だ、来なきゃ良かった…そんな風に思ってはいないかしら？　
本当に、トホホな感じで……。