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お子ちゃまに完敗!? ①

「はい〇〇ちゃん、中にどうぞ。
 ……あらら、どうしちゃったの?」

ここは、小児科――。
その女の子は、診察室に入る前から泣いていた。…それも、号泣。

しかし健気にもその子は、実に頑張っていたのだ。

「はい、どうじょ~。 はい、どうじょ~。」

きっと、お母さんと約束したのだろう。 「きちんと診察できるよね」 と。
だから号泣しながらも、自分でお洋服の前をたくし上げ、もしもし(聴診)の準備をしながら入って来たのだ。
精一杯の 「はい、どうぞ」 という言葉も添えて…。

そんな女の子の後ろを、お母さんは苦笑いをしながら付いて来る。

その様子が余りにも可愛くて、先生も私も思わず微笑んでしまった。

「〇〇ちゃん、良い子だね。 頑張ってるんだね。」 と私。

「あっら~〇〇ちゃん、泣かなくても大丈夫だよ。 もしもしするだけだからね~。」

先生が、ニコニコしながら手招きをする。

その子は泣きながらもきちんとイスに座り、診察をさせてくれた。
もしもしをして、おノドも診せて……。

「ほ~ら、〇〇ちゃんが良い子だから、もう終わっちゃった。
 でも、泣かなくても大丈夫だったでしょ?  先生、痛いことしなかったでしょ?」

小さな肩をヒックヒックと揺らしながら、その子はコクンとうなずいた。

「はい、じゃぁ、お薬が出ますからね。 お大事にして下さいね。」

先生のニコニコ顔にも、とうとう最後まで笑顔を見せてはくれなかったけれど…。

こんな時、本当に子供ってスゴイなって思う。
あんな小ちゃい体で、きちんと頑張っているのだ。

[愛おしい]という言葉を形にすると、きっとこんな子供の姿になるんじゃないかな……
素直にそう思ってしまう出来事だった。

更新日:2012-10-14 22:43:47

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