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「八景島クルセイダーズ」第4話 最後の合宿

関東大会予選を目前にした夏休み合宿のことです。
私たちの通う八景中学は海のすぐそばにあり、ハーバーハウスという自慢の宿泊施設がありました。
部活の合宿や学園祭の準備などは、必ずこの施設に泊まります。
剣道部の合宿は2泊3日で、朝6時に起きて、海岸2往復。その後、朝ご飯を食べて昼まで稽古。それからお昼ご飯を食べ、夜までまた稽古。夜ご飯を食べて夜8時に就寝という過密スケジュールでした。
関東大会のオーダーはすでに組み上がってましたが、これは私と顧問の館脇先生だけの内緒。
「今回の合宿で決定する。」と部員のみんなに伝え、みんなにヤル気を出させる大作戦なのでした。
オーダーは完璧!
ここまで強い仲間たちが揃ってくれたのは誇りだと館脇先生も涙しておりました。

先鋒 岡田弘樹

岡田くんは二年生の出世頭君なのです。
小学校からの経験者である岡田くんはみんなから岡田師範代とも呼ばれてます。
由くんが前に言ってたのですが、おそらく技術においては彼に勝る人は3年生でも少ないとのことです。
それくらい強いのです。

次鋒 本田涼

ポッチョです。
人読んで戦艦ポチョムキン。
その巨体たるやコニシキもムサシマルもびっくりです!
私は初めてポッチョに会った時、その風貌を見ただけで恐くて恐くて逃げ出してしまいました。噂によると小4の時に6年生10人をバッサバッサとなぎ倒したとか・・・。
ひゃーっ!!
でもしゃべるととても心優しい可愛い可愛いポッチョ。
う~む。次鋒にはもったいないです!

中堅 町田卓

人読んで策謀の卓。
卓ちゃんはとにかく頭がいいのです!
「八景を恐れずとも卓を恐れよ。」と金沢中学の顧問が練習試合の時、自らの部員に語ったというのは有名な話です。私たち剣道部のキャプテンで天才的な戦略家。卓ちゃんの作戦通り戦い、勝った試合が何度あったことでしょう。

そして、
副将 島田由和

八景中学史上最狂の剣士と悪名高く、その気迫たるや恐らく神奈川県下トップクラス。烈火の如き連撃、一撃必殺の剛腕、さらに泣く子も黙る雷の如き大声で試合相手は必ず震え上がります。
でも反則の多さが玉に傷。
怒るともう手がつけられません!
危ない危ないなのです。

最後はやっぱり
唯一絶対エース
主将 寺方ナオヤ

剣道2段の実力で個人戦県大会優勝候補とも言われてます。
県内でも『殲滅の寺方』の名は有名で、八景中の名を世に知らしめたのはナオヤの功績があってこそです。
剣道経験の浅い私にはよく分からないのですが、ナオヤの構えを目の当たりにすると、金縛りにあったように動けなくなると巷では噂されてます。
とにかく型が綺麗でクセがなく、どこから打って来るか見当がつかないんだとか!
確かに1年生の時からナオヤが負けたところはあまり見たことないかもです。

今回ばかりはみんな自信がありました。何人かは、全国の可能性も本気で考えていたかもしれません。

でも・・・。

この年、私たち剣道部が大会の舞台に上がる日はついに来ませんでした。

事件が起きたのは夜の事です。
8月2日、合宿の最終日。
私たち3年生にとってはなんといっても中学生活最後の合宿、消灯時間が過ぎてもみんな寝るわけにはいきません。
恋愛の話、怖い話、ちょっとエッチな話などひそひそ話に話題は尽きませんでした。
私は迂闊にも少し眠くなってきてしまったので、こっそりと外に出て、海風にあたろうと思いました。
八景中学のそばには「海の公園」という海岸があります。「今日ならキレイな星空も見えるかも!」と思いました。
眠い目をこすりながら、トイレに行くふりをして、廊下に出ます。ハーバーハウスは二階建ての建物です。一階には洋風の白いテーブルとイスが置かれたロビーが広がり、二階は大部屋が2部屋の3人部屋が6部屋、お風呂はそれぞれの部屋にユニットバスがあります。
至れり尽くせりの施設でした。
怖い話を聞いたあとだし、ひとりで夜の廊下を歩くのはやっぱり怖い。
私はおっかなびっくり部屋を出て、カーペット張りの廊下をまっすぐ進み、突き当たりを左折、階段を降りてロビーに出ました。
すると暗がりの中、ロビーのイスの一つに見覚えのある人影が座り、俯いているのを発見しました。

更新日:2011-10-22 10:51:57