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『・・・なんだこれは。』
心の中で何度もその言葉が反芻された。ナンダコレハ。ナンダコレハ・・・と。

「2001/05/02」と無題の件名のうえに書かれている。10年前。ちょうど高校生になりたての頃だろうか。携帯の故障か、何かの嫌がらせか、それ以外だったらなんだというのだ。
昨夜の「またあした。」も同じく日付を確認してみる。
「2000/08/24」と書かれてていた。中学最後の夏休み。剣道部のみんなで花火をした。
忘れていた記憶。思い出そうとしてもセピア色でうっすらとしたものしか思い出せない。
・・・どういうことだ。
ナンセンスとはこのことか。考えても全く結論が出ない。
大きく深呼吸をする。疲れているのかもしれない。深く考えすぎだ。どうせ迷惑メールの一種だろう。
携帯を閉じ、モスコミュールを一気に飲み干す。帰って寝よう。今の僕には休息が必要だ。
その時、後ろのドアが開き、傘を閉じる音がした。
「待ってたぜ。」
後ろからゆっくりとした声で来店者はそう言った。
店主に目をやるが、反応はしていない。僕に話しかけたのか。
後ろを振り向く。
短い金髪に薄手のジャケット、ダメージの効いたデニムパンツが雨で濡れている。
「久しぶりだな。ナオヤ。」
その時、急にかつての記憶がフラッシュバックし、その派手な風貌の人物が何者なのかを認識した。
その人物こそこれから始まる長い長い迷路に僕を誘いこむことになる男。
島田由和だった。

更新日:2011-10-22 10:49:55

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