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「八景島クルセイダーズ」第2話 ユキコ

中学時代の仲間はみんなバラバラになってしまいました。
ナオヤは東京にある私立の男子校に、卓ちゃんやぽっちょは藤沢の公立高校に、由くんなんかコンビニの店員さんになってしまいました。
横浜にある私立の女子校に入学出来たのは嬉しかったけど、今となれば淋しくて淋しくて卓ちゃん達と同じ公立高校に行けば良かったと後悔してます。
中学1年生のクラスでナオヤと由くんに出会い、2人に連れられて何故か剣道部のマネージャー?になったけど、2人のお陰で中学時代はとても充実していました。休みの日もいつも剣道部のみんなと遊んで毎日があっという間に過ぎていきました。
でも、剣道部のみんなとずっとつるんでいた事で女の子の友達が一人もいなかったのは今となって大変後悔してます。
入学して間もなく、事件は起きました。
なんと摩訶不思議な・・・朝、学校に来るとあろうことか私の机が無いのです。
よく事態が飲み込めない私は素直に隣の席の山口さんに聞きました。
「ねぇ、私の机知らない?」
しかし、山口さんは返事をくれません。

・・・まさか。

私はとっさに気づきました。いえ、とても勘が良くて、容姿も淡麗な私が気づかないはずがありません。

『もしや・・・シカト?』

気づくと教壇の方向からクスクスと笑い声が聞こえます。慌てて教壇の方を向くと、そこには中学も一緒だった橋口加奈子 "通称「血のメアリ」"と愉快な仲間たちがこちらを見て笑っております。
『図ったな・・・メアリ。』

橋口さんがメアリを襲名したのは(というよりさせられたのは)全て、由くんのせいでした。
歴史の授業でイングランド女王「メアリ1世」のプロテスタント迫害を勉強した日の昼休み、喧嘩上等、銃刀法違反の由くんはいつものように木刀を持ち出し、橋口さんに突きつけて言いました。
「お前、今日からメアリな。」
「えっ」
橋口さんはキョトンとしていました。
「お前、河合虐めてるらしいな。」
河合さんは読者家で有名でした。
「何のこと?」
橋口さんはしらばっくれてました。往生際が悪いお人なのです。
「うるせぇ。お前は今日からメアリだ。なぁ、みんな。」
由くんはクラス中に睨みを利かせました。そして瞬く間に橋口さんは「血のメアリ」の愚名を襲名したのです。

そのメアリが、今か今かと反撃のチャンスを見計らっていたのは少し考えれば分かる事でした。
頭が良くて、美貌の持ち主である私とした事が・・・。
「くだらねぇ。」
私はそうぼやき、窓際の最後尾で読者に励んでいるもう一人のかつてからの同級生、河合さんの方へ向かいました。
河合さんは何故かどのクラスに居ようが、いくら席替えしようが、窓際の最後尾に鎮座されております。
さすがに読者家。何か席替えにおける秘策のようなものを体得されているのでしょうか。
「河合さーん。」
河合さんは相変わらず書に夢中です。
「ねぇ、ねぇ。なんかあそこにいるメアリが高校生にもなってくだらない事してるんだけど、私の机知らない?」
クラスから少しどよめきが聞こえます。
こんな天使のような容姿を持った私が悪口を言ったから度肝を抜かれたのでしょうか。
「ねぇ、河合さん!」
「わ、私に、は、話かけないで。」
「えっ・・・。」

なんてこと。

『ヴルートゥス・・・お前もか。』
私は思わず心の中でそう呟きました。
まさかの裏切り。
まさかの読書家。
私は悔し涙を堪え、メアリの方を睨みます。キッと睨みました。
「寺方か島田でも呼べば?1人じゃ何も出来ないもんね。」
メアリがドヤ顔をしています。

更新日:2011-10-22 10:47:49