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「そう。ユキコへの返信だよ。」
「新宮からのメールに返信すると、違う世界に移動するって事?」

「うん。オレの考えだとユキコからのメールは多分、本当に10年前から届いたメールだと思う。
何故かは分からない。でも過去から未来にメールが飛んだんだ。」

「やれやれ。卓ちゃんはとんだファンタジスタだぜ。」
もう沢山だった。わけが分からなすぎる。パラレルワールドや過去からのメール。・・・なんでもありかこの世の中は。

「そう腐るなよ。言ってるだろ。あくまで仮説だって。そうだ。ナオヤと同時にもう一つ世界を移動してる物がある。」

「なんだよ。」
「携帯だよ。」
「え?」
「そのユキコからのメールに返信したのは間違いなく『世界A』のヤンキー由和だろうね。そしてその返信でジャンクションが生まれ、お前が携帯と一緒に『世界B』にやって来た。そのメールでの会話ややりとりが10年前になされたという前提の世界に。」

「つまり由和はオレから携帯を奪って新宮のメールに返信して、そのやりとりを前提に新宮や俺たちが大人になったって事?ん?よくわかんないや。」
「紙に書くよ。」
卓ちゃんは立ち上がり、壁際の本棚から適当なノートを取り出し、勉強机の引き出しに入っていたボールペンで文字を書き始めた。

①『世界A』の由和が10年前のユキコに向けてメールを返信する。

ジャンクション起動
ナオヤが『世界B』へ

②10年後のナオヤ(ナオヤ名義の由和)と高校生のユキコがメールのやりとりをしたという前提が『世界B』の中で生まれる。
③その前提のまま、時が流れる。
④『世界A』では殺されていなかったはずの由和がユキコに殺される。

「こんな感じかな。」
「なんか分かったような分からんような。」
「多分、10年後のナオヤに扮した由和が高校生のユキコとメールのやりとりをした事で、『世界A』では無かったはずのユキコと由和の絡みが『世界B』で生まれたんだよ。だからユキコと由和が付き合った。そして由和は殺された。」

「・・・信じられない。」

「オレもだよ。自分で言っててバカみたいだよ。ただ、この仮説が正しいかどうか確かめる方法があるよ。」

「なに?」

「・・・由和を生き返らせるんだ。」
「えっ!?」
「もう一度、その『たすけて』というメールに返信するんだ。そうすれば、お前はまた違う世界に飛ぶことになる。」

「マジで・・・。」

「ただ、その返信次第で次に誰が死ぬのかは分からないけど。30代男性かもしれないし、結局、由和かもしれない。オレやナオヤが殺される可能性もある。ハイリスクには違いない実験だよ。」

更新日:2012-01-09 11:49:09

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