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「八景島クルセイダーズ」第10話 仮説

「パラレルワールドって知ってるか?」
卓ちゃんは僕に向かって静かにそう言った。
「なんとなく。もう一つの世界みたいなものでしょ。」
「正確にいうと、この世界以外の可能性とでも言うべきかな。」
「分かるよ。でもそれが何なの?」
「いや、少し気になったんだ。ナオヤの話からすると、確かに由和の死は不可解だし、容姿も違うときた。そして昨日ナオヤがニュースで見たというユキコの30代男性殺害の件。それは多分、今のこの世界では行われなかった事になっている。」
「は?おいおい。オレは本当に見たんだよ。新宮の顔もニュースに出てた。」
「だからそれはもう違う世界の話なんだよ。少なくともオレはそんな事件知らないし、今日初めてユキコの名前をテレビで見た。」
「違う世界?・・・ごめん。意味が分からないわ。」

卓ちゃんが何を言おうとしているのか皆目見当がつかなかった。

「つまり、なんて言えばいいんだろ。これはあくまで仮説だけど、・・・例えばナオヤは昨日まで、『世界A』にいたとする。」

「え?・・・うん。」

「ナオヤはその『世界A』という名の道を真っ直ぐと進む予定だった。でも何かがスイッチとして作動して、その道に高速道路にあるようなジャンクションが現れたとする。」
「違う道に繋がるってこと?」
「そう。そしてナオヤはそのジャンクションで『世界B』に乗換えた。つまり今の世界に。」

スイッチ?
ジャンクション?
世界?
僕ははっきり言ってちんぷんかんぷんだった。
卓ちゃんの例えは恐らく正確なんだろうけど、今起こっている状況が複雑すぎて頭のなかで処理しきれないのだ。
「えーと・・・。じゃあ昨日会った由和と今日の由和は別人ってこと?」
「そう言っても問題ないかもね。あくまで仮説だけど。ナオヤが昨日会ったのは『世界A』の由和。今日のは『世界B』の由和。」
「はぁ・・・。」

「ちなみにオレも『世界B』の町田卓ということになるかな。」
「オレは?」

「ナオヤは世界を移動してるからなんとも言えないけど『世界A』の人間だろうね。お前はこの『世界B』に移って来たんだから。」
「じゃあ、もともと『世界B』にいたオレは?オレ2人いることになっちゃうじゃん。」
「まぁ、その辺はよくわかんないね。あくまでも仮説だから。もしかしたら2人いるのかも。」

卓ちゃんは軽く笑いながらそういった。

おいおい。
冗談じゃないよ。

「まぁ、それはとりあえず置いといて、・・・スイッチが何かという点だよ。」
「ジャンクションを生み出すスイッチ?・・・それって。」

思い当たるものは一つしか無かった。

更新日:2012-01-09 11:47:57