• 作品を探す:

小説

携帯でもPCでも書ける!

  • 16 / 23 ページ

「八景島クルセイダーズ」第9話 繋がれた会話

島田は安らかな表情で眠りについていた。もう二度と覚めることのない眠りに。昨日の島田からは想像もできないほど安らかな表情だった。
「由和。卓ちゃんとナオヤ君が来てくれたよ。」
由和のお母さんは枯れた声で由和に話しかけた。ずいぶんと泣いたのだろう。疲れ果てた様子で、彼女からは由和がそうであるように生気を感じられなかった。
卓ちゃんは落ち着いた様子で、由和のお母さんの気を遣い、言葉を選びながら会話していたが、僕はそれどころではなかった。


おかしすぎるのだ・・・。


まず、由和の髪が黒い。

なぜだ。昨日のヤツは大げさなくらいの金髪を携えていた。今目前にいる男は短髪で真面目そうな姿をしている。顔こそ由和だが、印象がまるっきり違う。
次に、由和は新宮と付き合っていたのだと由和のお母さんは話した。そんな事、初めて知った。それも付き合って6年くらいになるという。
しかし、昨日の由和からはとてもではないが新宮と恋人同士であったとは思えなかった。由和は新宮の居場所も分からない様子だった上に、「取り戻す」などという言葉も使っていた。
何かがおかしい。
この空間、現実に薄っすらとした、でも確実な違和感を感じた。

「由和の部屋を見せていただいてもよろしいでしょうか。久々にあいつの部屋にも行ってみたくて・・・。」
卓ちゃんは由和の母親に向かってそう言った。
卓ちゃんにしては少し無粋で強引な提案だと思った。
「ええ・・・。是非行って来てあげてください。」
「有難うございます。」
「お茶をいれますね。気がつかなくてごめんなさい。」
「すみません。お構いなく。僕達は大丈夫ですから。おばさんも少し休んでください。」
「有難う。」
卓ちゃんは軽く微笑みながら会釈をし、僕についてくるよう示唆し、二階に上がる階段のほうへ向かった。
「ナオヤ、早く。」
「あ、あぁ。」
様々な事象が少しずつおかしく、茫然としていた僕は卓ちゃんの言葉で我に帰った。

更新日:2012-01-08 04:43:24