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小説

携帯でもPCでも書ける!

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「八景島クルセイダーズ」 第7話 君をその名でもう一度

朝起きて、顔を洗うために洗面所に向かう。今日は土曜日で会社は休みだ。昨日は本当に散々な目に合った。
そう思いながら顔を拭き、リビングに向かい、テレビの電源を付けたところで、島田殺害のニュースを知った。

今回ばかりはかなりの衝撃を受けた。

僕と出会った数時間後に島田は殺されたということか。
しかも、指名手配されている新宮ユキコに・・・?

『この事件は僕のすぐそばで起こっているのか?』
『新宮もまだこの近くにいるのか?』

そう思うとかなり恐ろしくなった。

しかし、ニュースを見ていると、島田の突然の死には不可解な点がいくつもあることに気づいた。

まず、島田は新宮とどうやって接触したのだろう。
島田の遺体が発見されたのは葉山にあるマンションの一室だという。
島田の1人暮らしだったらしいが・・・。
島田はもともと新宮の居場所を知っていたのか?
だとしたらこの点は納得できるが、昨日の様子からしてどうもそのようには思えなかった。

次になぜ殺されたのか。島田は少なくとも新宮を守ろうとしている様に思えた。
2人に何があったのだろう。

さらに、最も気になるのが、どの番組でも『連続殺人』というワードに触れていない点だった。昨日の朝のニュースで、新宮は同棲していた35歳の男性を殺害した容疑者として報道されていた。今日(もしくは昨日の夜)、島田を殺害したのなら間違いなく連続殺人であろう。しかし、どのニュースを確認しても35歳の男性には触れていない。あたかも島田殺害が初犯であるかのような報道をしていた。

・・・それにしても突然すぎる。
信じられない。
島田は昨日、あんなにぴんぴんしていたのに・・・。
半信半疑なところは当然拭えずにいたが、ニュースで映る顔は確かに本人の顔だった。

ふと新宮の事が頭をよぎった。
僕は中学の頃、新宮の事が好きだった。容姿は美しく、可憐で、性格は男勝りなところもありながら、どことなくフワフワとしていて、透明感があり、その世間知らずな笑顔が愛らしくもあり、弱々しくもあった。
誰にでもついていきそうで、突然消えてしまいそうで、『守ってあげたい』と誰しもに思わせる・・・そんな少女だった。

昨日、島田はこう言った。

『本当にユキコに殺人なんてできると思うのか・・・?』

・・・確かに普通では考えられなかった。
かつての新宮と「犯罪」という言葉は別世界の物のように、全く相交わらない物に感じられた。

しかし、そう言った島田はその日のうち(もしくは翌朝)に新宮本人に殺されたということになる。

驚きの気持ちが収まらず、テレビにずっとしがみついていた僕は、我に帰り、落ち着きを取り戻すべく再び洗面所に向かい、歯を磨く。
そして、台所に向かい朝食の準備を始めた。
冷凍されていた食パンをレンジにかけ解凍し、トースターへ。
その間にフライパンに火をかけ目玉焼きを作る。水を卵に振りかけ、フライパンに蓋をしたところで、寝室の方から携帯の音がした。


・・・携帯?


・・・携帯だと?


何も考えずに携帯を取りに行こうとして、この事態が異様である事に気づき、立ち止まる。
全身に一気に鳥肌が立つ感覚があった。


・・・なぜ携帯が鳴っている?


昨日、オレは確かに島田に携帯を奪われた。
それなのになぜ今、ここにある。

恐る恐る寝室に入り、枕元に転がった携帯を手に取る。
ディスプレイには『卓ちゃん』という文字が浮かんでいる。
湧き出る汗の感触を感じながら、通話ボタンを押した。

「もしもし・・・。」
声がかすれて、うまくでなかった。明らかに僕は怯えていた。
「ナオヤ・・・か?」
聞き覚えのある声。懐かしい声。
それはまたもや中学時代の旧友、町田卓の声だった。
「え、・・・町田?」
表紙抜けた声を出してしまった気がする。しかし、町田はそんな僕の事は気にする様子もなく、
「良かった!携帯変えてなかったんだ。久しぶりっ!」
と続けた。
「あ、あぁ・・・。」
安心した様な力が抜ける様な、複雑な気持ちで曖昧な応え方をしてしまう。

更新日:2011-11-02 20:43:13