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紫水晶の瞳
世界が、白い闇に染まる。
ふわり、ひらりと舞い落ちる空の残骸。
それは死者を悼むように、その総てを覆い隠してゆく。
真紅の髪と薔薇の花びらが、白い世界に美しく映える。
投げ出された躰は既に冷たく、瞳はもはや光を映してはいない。
その瞳が最期に視たものは一体なんだったのだろう。
それはきっと絶望に他ならないという事は、誰より自分自身が痛いほどに解っている。
まるで彼女と自分との間を切り裂くかのように吹き荒んだ突風が、一瞬にして花びらを攫い遥か上空でそれらを解放する。
白い雪に混じり、空中をさ迷う赤い、紅い花びら。
それらは一枚、また一枚と眼前をすり抜け再び地表を、そして少女を赤く染めてゆく。
立ち尽くし、その光景をただ静かに見守る事しか出来ない自分。
無力さに嘆きながらも、けれどそれを見つめる瞳はやけに冷静で、まるでどこか遠い場所からこの場所を見ているかのように現実感がない。
動かない少女。
薔薇の絨毯。
降り止まない雪。
舞い散る花びらは、少女の躰と、その周囲をどんどん赤く染め上げてゆく。
あぁ……違うんだ。解っているんだ。
これが本当は花びらなどでは無いという事を。
彼女が抱えていた赤い薔薇は花束には程遠く、ほんの数本だけだった。
だから薔薇の花びらが紅い絨毯を生み出せる訳がないのだ。
これは……
この地面いっぱいに広がる赤い色は、彼女の―――……
世界が、白い闇に染まる。
ふわり、ひらりと舞い落ちる空の残骸。
それは死者を悼むように、その総てを覆い隠してゆく。
真紅の髪と薔薇の花びらが、白い世界に美しく映える。
投げ出された躰は既に冷たく、瞳はもはや光を映してはいない。
その瞳が最期に視たものは一体なんだったのだろう。
それはきっと絶望に他ならないという事は、誰より自分自身が痛いほどに解っている。
まるで彼女と自分との間を切り裂くかのように吹き荒んだ突風が、一瞬にして花びらを攫い遥か上空でそれらを解放する。
白い雪に混じり、空中をさ迷う赤い、紅い花びら。
それらは一枚、また一枚と眼前をすり抜け再び地表を、そして少女を赤く染めてゆく。
立ち尽くし、その光景をただ静かに見守る事しか出来ない自分。
無力さに嘆きながらも、けれどそれを見つめる瞳はやけに冷静で、まるでどこか遠い場所からこの場所を見ているかのように現実感がない。
動かない少女。
薔薇の絨毯。
降り止まない雪。
舞い散る花びらは、少女の躰と、その周囲をどんどん赤く染め上げてゆく。
あぁ……違うんだ。解っているんだ。
これが本当は花びらなどでは無いという事を。
彼女が抱えていた赤い薔薇は花束には程遠く、ほんの数本だけだった。
だから薔薇の花びらが紅い絨毯を生み出せる訳がないのだ。
これは……
この地面いっぱいに広がる赤い色は、彼女の―――……
更新日:2012-02-06 03:25:47