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ハロウィンの魔法
おやおやハロウィンだというのに、小さな魔女が道のはじっこで顔をしかめていますよ。
『トリック・オア・トリート!』
かぼちゃをかぶった男の子が声をかけたのに、小さな魔女はぷいっと顔をそらしました。
『せっかくのハロウィンなのに、どうしてそんなつまらなそうにしているんだい?』
「くだらないからよ」
『みんな、たのしそうにしているじゃないか』
「あんなもの、バカが集まってバカさわぎしているだけのバカな行事だわ」
『キミはずいぶん大人なんだね』
「そうよ、こんなコドモじみたことをしてられないわ」
『でも大人だって楽しんでいるよ』
「グのコッチョウね。お祭りさわぎで事故や事件までおきているじゃない。犯罪をショクハツしているようなものだわ」
どうやら小さな魔女は、楽しもうという気は少しもないようです。
「あなたもそんなモノをかぶっていて、はずかしくないの? お菓子がほしいなら他をあたりなさい」
『キミはお菓子はくれないのかい?』
「おあいにくさま。ドコにも行ってないから、そんなものないわよ」
『じゃあ、イタズラしてもいいんだね』
「だからそんなことに付き合ってられ……えっ!?」
どうしたことでしょう、男の子が手をふり上げると同じ目の高さにあったかぼちゃの頭が下の方に見えます。
魔女はあわてて近くのショーウィンドウに自分の姿を映しました。
そこには小さな魔女はいません。
ムネがきゅうくつそうで、スカートがずいぶんと短くなっている大人の魔女がいるだけでした。
「コレはどういうこと!?」
男の子はニヤリと笑いました。
(かぼちゃをかぶっているのに、たしかに笑ったように見えたのです)
『お菓子をくれないからさ』
「こんなイタズラなら大歓迎だわ!」
魔女はよろこびました。
いつも小さなコドモあつかいされるのが大キライだったからです。
ハロウィンだからとこんなカッコウで表に出されたこと、小さなコドモたちと行動させられること、それに大人がついてくること、すべてがガマンなりませんでした。なにしろ、そこから逃げ出したぐらいなのですから。
「あなた、いったい……」
『ボクはジャックオーランタン(かぼちゃのおばけ)さ。ハロウィンをもっとたのしもうよ!』
手を引かれて走り出すと、魔女はワクワクしてきました。
だってあんなにあこがれていた大人です。もう棚の上の本も自分ひとりで取れるし、「まだ早い」と惨忍な事件や性犯罪についての資料を取り上げられることもないのです。
『さあ、たのしんでおいで』
かぼちゃのおばけは魔女の背中を押しました。
『あ、そうだ。この魔法は12時までだからね』
「えっそんなに短いの!?」
せっかく大人になれたというのに、ガッカリです。
『ハロウィンの魔法だからね。それともうひとつ、ダレかに正体がキミだと気づかれたらいけないよ』
「大丈夫よ。私だなんて、気づきっこないわ!」
魔女は夜の町に飛びこんで行きました。
誰かれかまわずに「トリック・オア・トリート!」と声をかけたり、大人の男の人に声をかけられて思わせぶりにしてあしらったり、お酒を少しだけなめてみたりしました。(ニガイだけでしたが)
さっきまで犯罪がどうとか言っていたとは思えません。でもお祭りなのだから、ちょっぴり大目に見ましょう。
『トリック・オア・トリート!』
かぼちゃをかぶった男の子が声をかけたのに、小さな魔女はぷいっと顔をそらしました。
『せっかくのハロウィンなのに、どうしてそんなつまらなそうにしているんだい?』
「くだらないからよ」
『みんな、たのしそうにしているじゃないか』
「あんなもの、バカが集まってバカさわぎしているだけのバカな行事だわ」
『キミはずいぶん大人なんだね』
「そうよ、こんなコドモじみたことをしてられないわ」
『でも大人だって楽しんでいるよ』
「グのコッチョウね。お祭りさわぎで事故や事件までおきているじゃない。犯罪をショクハツしているようなものだわ」
どうやら小さな魔女は、楽しもうという気は少しもないようです。
「あなたもそんなモノをかぶっていて、はずかしくないの? お菓子がほしいなら他をあたりなさい」
『キミはお菓子はくれないのかい?』
「おあいにくさま。ドコにも行ってないから、そんなものないわよ」
『じゃあ、イタズラしてもいいんだね』
「だからそんなことに付き合ってられ……えっ!?」
どうしたことでしょう、男の子が手をふり上げると同じ目の高さにあったかぼちゃの頭が下の方に見えます。
魔女はあわてて近くのショーウィンドウに自分の姿を映しました。
そこには小さな魔女はいません。
ムネがきゅうくつそうで、スカートがずいぶんと短くなっている大人の魔女がいるだけでした。
「コレはどういうこと!?」
男の子はニヤリと笑いました。
(かぼちゃをかぶっているのに、たしかに笑ったように見えたのです)
『お菓子をくれないからさ』
「こんなイタズラなら大歓迎だわ!」
魔女はよろこびました。
いつも小さなコドモあつかいされるのが大キライだったからです。
ハロウィンだからとこんなカッコウで表に出されたこと、小さなコドモたちと行動させられること、それに大人がついてくること、すべてがガマンなりませんでした。なにしろ、そこから逃げ出したぐらいなのですから。
「あなた、いったい……」
『ボクはジャックオーランタン(かぼちゃのおばけ)さ。ハロウィンをもっとたのしもうよ!』
手を引かれて走り出すと、魔女はワクワクしてきました。
だってあんなにあこがれていた大人です。もう棚の上の本も自分ひとりで取れるし、「まだ早い」と惨忍な事件や性犯罪についての資料を取り上げられることもないのです。
『さあ、たのしんでおいで』
かぼちゃのおばけは魔女の背中を押しました。
『あ、そうだ。この魔法は12時までだからね』
「えっそんなに短いの!?」
せっかく大人になれたというのに、ガッカリです。
『ハロウィンの魔法だからね。それともうひとつ、ダレかに正体がキミだと気づかれたらいけないよ』
「大丈夫よ。私だなんて、気づきっこないわ!」
魔女は夜の町に飛びこんで行きました。
誰かれかまわずに「トリック・オア・トリート!」と声をかけたり、大人の男の人に声をかけられて思わせぶりにしてあしらったり、お酒を少しだけなめてみたりしました。(ニガイだけでしたが)
さっきまで犯罪がどうとか言っていたとは思えません。でもお祭りなのだから、ちょっぴり大目に見ましょう。
更新日:2011-10-15 21:35:53