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小説

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一目惚れ

当たり前中の当たり前なんだけど、京介は、女性に
興味がない、わけではない。と、いうよりも完全なる
フェミニストで紳士なので、生まれてこの方、女性に
対して悪い気持ちを持ったことがないんだと思う。
これは大学時代の話なんだけどさ。一緒に電車に乗って
いて、たまたま並んで座っていたんだ。空いていたから。
そのうちに、ちょっと混雑してきてさ、京介の目の前に
女性が立ったわけ。若いOLさんかな。スーツだったし。
彼女が目の前に立った瞬間に、京介は、サッと立ち上がり、
「よろしければお座りください」
って言うわけさ。もちろんその前に、しゃべっていた
僕に対しては、「話を中断して失礼します」って言うことも
忘れなくね。
もちろん健康的な女性であり、特に妊娠もしていないし、
具合も悪いわけではない女性に対して、普通はそんなこと
しないだろ。
彼女もビックリした顔をして「い、いえ」って断ったわけだ。
まあ、もっともその前に、京介の容姿にすっかり心を
奪われてしまったみたいだけどね。
京介は「それが普通」だからさ、ことさら紳士的に、
「華奢なおみ足にご負担をかけさせることは、貴方の美しさ
にとって得策とは言えませんよ」
と、微笑んで言うわけだ!もう究極って感じだろ。
もう彼女の目は完全にハートになっちゃってさ。そりゃそうだ
よ。
もちろん本人は意識しないで、これが「当たり前の行為」
だと思っているんだもんね。
これが紳士!とピカーッと後光が差しているみたいでさ。もう
周囲の男性は全員、思わず顔を伏せてくれてしまったぐらいだ。

それからしばらく、同じ電車で京介を探す彼女を何度か見かけた。
京介が在来線に乗るなんて確率は、一年に一度あるかないかで。
そう言ってあげたかったけれど、きっと京介の隣にいた僕のこ
となんて眼中にないだろうし、記憶にもないだろうから、僕は声
をかけてあげられなかった。

可哀想な事したな。
ああいうの一目ぼれって言うんだろうな。

更新日:2009-01-10 22:05:10