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実装

夕闇がだんだんと迫った午後のこの時間。
柔らかなオレンジ色の夕日が、ビアンカがいるバスルームの
窓に、長い影を伴い差し込んでいた。


夫のリュカは、
「グランバニア国境付近への視察で、帰宅は今夜遅くなる」
と言って今朝城を出立していた。
双子達は今晩の夕食はピピンの家で、ピピンのお母さん
手作りの料理をご馳走になると言うことで、城下にある、
宿屋を兼ねたピピンの自宅に、既に遊びに行っていた。



国王家のプライベートルーム・・・
特に、王の寝室、そして寝室に繋がるバスルームを、王妃に
一言の断りも無く無断で入り込み、整理整頓や清掃する
事なぞ・・・そんな下品な行動や振る舞いを、しっかり教育を
受けた王家付きの執事やメイド達は、これまで過去一度も、
絶対に行う事はなかった。



(今のタイミングなら<コレ>着ちゃっても、誰にも
見られずに済むわ・・・!)


身体に巻きつけていたバスタオルを剥ぎ、何も纏わぬ生まれた
ままの姿になったビアンカは勇気を振り絞って、恐る恐る・・・
小っちゃな小っちゃなまるで「三角巾」の様なパンティに、
その瑞々しいまでの足をゆっくり片方づつ入れ、形の良い
バスト部分には、まるで<ヘアバンドさながらの大きさ>
しかないストラップレスタイプのブラジャーをそぉっと・・・
あてがい、最後に後ろの部分にあるホックを、自分の手を
回して締めた。



<グランバニア王妃専用の装備品>を着用し終えたビアンカは、
眼前に置いてある姿見に映っている自分の姿を恥ずかしさの余り、
上目づかいで眺めた。


普段使いの下着よりも小さ目な<エッチな下着>。


身体のサイズに合わないのに無理やり着用した事で、余分な
「お肉」がはみ出したり、<エッチな下着>がやたらと引き
伸ばされたりと・・・無様な様子を予め覚悟していたビアンカ
だったが、彼女の予想を反して<エッチな下着>は元々の形が
全く崩れる事なく、綺麗に上品に、ビアンカの身体に
「まるで彼女のスリーサイズを計測した上で誂えた」
かの如く、見事なまでにフィットしていた。



(良かったぁ~!
小っちゃいのに無理やり<装備>して、「ボンレスハム」の様
にならなくて・・・!!!)


ほっとした王妃は、やっと安心して「大きな姿見に映し出された
自分の全身」を、ゆっくりと眺める事が出来た。



『・・・はぐれメタル由来の・・・軽さ』
『・・・その上、回避率が大変高く・・・・』



オジロンの台詞を思い出したが、その性能はバスルームで
身につけただけでは判らず仕舞いだったが、言われてみれば
バスタオル一枚を素肌に巻いていた時よりも、この
<エッチな下着>を身に着けている今の方が、ビアンカは
身体を暖かく感じていた。



(ウェストラインとヒップライン・・・
以前と・・・そんなに変わらないみたい・・・)


王妃としての任務、一家の妻として母親として、家事と育児を
こなした後にシャワーを浴びる事になるので、バスルームに入る
のは大抵夜になってしまうビアンカ。


燭光ではややもすると見落としがちな
<自身の身体の細かい部分>
を、夕日とは言え太陽光でくまなくチェックしても、
特に急激な身体の変化を、ビアンカは一切感じなかった。



(ふぅ~~)

心底安堵したビアンカは誰の目も無い事をいいことに、
ちょっとだけ・・・勇気を出して、<エッチな下着>を身に
着けたまま、腰に手をあて身体をくねらせ、その曲線美を
思いっきり晒す「大胆なセクシーポーズ」を取ってみた。





ガタン・・・


突然、背後で物が落ちる音がして大慌ててビアンカは振り返った。


今夜遅く帰宅し、その場には絶対に居合わせる筈が無いリュカが、
その顔を真っ赤にして佇んでいた。
足元には彼の護身用の「ブロンズナイフ」が一挺、落ちていた。

更新日:2011-10-07 18:43:45

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