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LINK(11月22日)

「ほんぎゃあ、ほんぎゃあ!」

赤ん坊の泣き声にサスケはコンロの火を止め居間に向かった。
小さなベビー布団の中で赤ん坊が真っ赤な顔で泣いていた。

「よしよし。」

サスケは言って抱き上げた。
背中をさすり、おむつに手を当てる。
そっと布団に寝かせると、手際良く濡れたおむつを外す。
洗いざらしのきれいなおむつに取り換えるとカバーを当てた。
だが赤ん坊はまだぐずぐずと泣いている。

「ちょっと待ってろよ。」

サスケが離れると、火が点いたように泣き声が大きくなった。
サスケは慌てず騒がず、台所に行くと哺乳瓶に粉ミルクと魔法瓶に入れてあったお湯を入れ、何度か揺すってかき混ぜると水道の水でしばし冷やした。

「これでいいかな。」

手の甲にミルクを落として熱さを測り、居間に急ぎ足で戻る。
わんわん泣きわめく赤ん坊を抱き上げ、哺乳瓶を含ませると、あっという間に静かになった。
しん、となった夕方の居間に、赤ん坊がミルクを嚥下する音だけが響く。
余程お腹が減っていたのか、哺乳瓶一杯に満たしていたミルクはみるみる内に減っていき、五分と持たずに空になった。
サスケは赤ん坊を縦に抱くと、とんとん、と背中を叩く。
この子はげっぷするのが下手ではないが、それでも、十分位はこうしていなければならない。
サスケは赤ん坊を時々揺すり上げながら、根気良くやさしく背中を叩き続けた。

「げぇっ。」

赤ん坊らしからぬ大きなげっぷが出て、サスケは思わず「おっさんくせぇな」と笑った。

「あうー。」

再びサスケに横抱きにされた赤ん坊はきょろきょろとあたりを見回している。
サスケは赤ん坊のぷくぷくと膨れたほっぺたを人指し指で撫でた。
声もなく赤ん坊がにっこりと笑った。
最近、よく笑ってくれるようになった。
腹が減っては泣き、おむつが濡れては泣き、何か不快な事があっては泣く。
乳児の世話は本当に大変だけれど、この瞬間、何もかも報われた気持ちになってしまう。

「マコト、もうすぐお父さん帰ってくるからな。
お父さんにお風呂に入れてもらおうな。」

マコトと呼ばれた赤ん坊は、小さなこぶしを口に持って行き、盛んに舌を押し付けて舐めている。
指をしゃぶったり、こぶしを舐めたり、ごく普通の行動なのだが、サスケはそんな時少しだけ、マコトに申し訳ない想いに駆られるのだった。

「おまえもやっぱりおっぱいが欲しいよなぁ。」

オレが普通のお母さんだったら良かったのにな、と思う。

更新日:2013-03-18 15:15:48

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