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小説

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第2章 偶然という名の符号

挿絵 183*228

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 結局、今朝の額(がく)の事は誰にも言えず自分の胸の内に
留める事にした。
 昨日のこともあるし母に相談すれば咎められるのは必然だし、
麻梨に持ちかければ興味本位で散々聞かれたあげく、決まって
最後には
「あんたってドジだからねー、どっかに置き忘れたんじゃないのー?」
とか言われるに決まっている。

 期末試験も近いというのに、尽きぬ悩みゆえに乙女の想いは
下校途中であろうと大きなため息を漏らすのであった。
(あーあ、どこかに本気で私の悩みを聞いてくれるイイ男落ちて
ないかなー)
「あわわっ!ホントに落ちてたー!?」
今度は誰もいない公園のベンチの下で、またも男が倒れているでは
ないか。

「あのー、昨日の方ですよねー」
 とても生死の境目に立たされているような人間にかける言葉とは
思えないが、この際そんなことはどうでもいい。
「…ハラヘッタ」
「えー? 嘘でしょー? またなのー」
 人間の運命とは一体誰が決めるのか?
 神様なら、もう二度とクリスマスは祝いたくないし
仏様なら、死ぬまでお線香はあげたくない。

 かくして優香は一日のわずかな小遣いの残りを投資すべく、
またしてもパンと牛乳を買いに行くハメになるのである。

「確かに日米の貿易摩擦緩和の折、私のような貴重な存在が
明日の日本の未来を背負っていくのも分からないではないけれど、
何も今でなくてもいいじゃない。せめてもう少し大人になって
からにして欲しいわ。この100円玉1個は私の血と汗と涙の
結晶なんだから。もう」

 ブツブツ一人で文句を言いながら戻ってみると、男はベンチの
上に身体を移していた。
「ほらー、買ってきたわよ。もう! 死んだら許さないんだからね」
 よっぽど頭にきているのか、言ってる事がムチャクチャである。

 男は昨日と寸分違わぬ狂人的なスピードで、あっという間に平らげ
掌にはビニール袋と空になったパックのみが残った。
「サンキュー…オウ! ユー、昨日ノレディーネ」
「そうよっ! 覚えててくれて光栄だわ」
「会エテ、スゴク嬉シイ」
「私は、あんまり嬉しくないんだけど」

「ミー、ユーヲ捜シテタヨ。アゲル物ガアルノダ」
「あっ、そうだ。私もあなたに渡すものがあるの。ほら、これよ。
昨日、落としたでしょ?」
「ノー! コレ、ミーノ違ウ。ミーノ、キー…コレダ」
 男は首から提げた大切そうなネックレスを引っ張り出して優香に
見せた。

 それは刻み込まれた文字こそ違うものの、鍵の大きさ、デザイン、
質感などまったく同種の物といってよかった。
 しかも、どちらも不可解な神秘性を放っていた。

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更新日:2015-06-27 11:19:54