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「ここか…」
 4人は頑丈な閂(かんぬき)の掛かった鉄柵の門前に立った。
「門にも鍵が掛かってるし、それとは別に鍵もかかってる。これは
入れないな」
「さすがに、この高さでは乗り越えることも無理だしね」
「そんな事をしてみろ、耕平。亡くなった村長と同じ運命を
辿る事になるぞ」
「うん…いっそ、何本か引き抜ければいいんだけど」
「それも無理だな。しっかりとした基礎に埋め込んであるし、
素手じゃどうにもならないな」
「その為のフェンスだもんね。やっぱ無理かー」
 2人の会話に割り込むこともなく、女子も呆然と柵を見上げている。

「俺らは招かざる客か…」
「そりゃ、そうさ。招待状でもない限り、泥棒と大して変わりは
ないんだ」
 途方にくれていると、いつの間に離れたのか優香と麻梨が2人を
呼んだ。
「ちょっと、こっちに来てー」

「何? 何か見つけたの?」
「うん、ほら。ここ見て」
 2人のいる場所に行ってみると、そこには人が一人余裕で
通れる位の幅で、柵が数本抜き取られていた。
「どうやら、通してもらえそうだな」
「うん…」
 健二を先頭に耕平、優香、麻梨と後に続いた。
 その場所が最初に自殺のあった場所であろうことは全員
気づいていたが、誰もそのことについて触れようとはしなかった。
 4人は広い庭に入り込むと、さらに大きく迂回して玄関へと
向かう。

「言うまでもないが、ここにも鍵が掛かってるぞ。どうするんだ?
 サンタクロースの真似事でもするか?」
「ううん、たぶん大丈夫。冴木さん、あの鍵を出して」
「う、うん。でも、え…と、どっち?」
「たぶんネックレスになってる方だと思う」
「はい。これね」
 優香はリュックのポケットから、それを取り出し耕平に渡した。

 ガチャリ
 玄関のロックは年月の流れを忘れさせるほど、スムーズに外れた。
「…開いた」
「よく、その鍵だと分かったな」
「すごいでしょ? 野生の感ですよ」
「ばっかみたい。2個しかないんだから確立は2分の1じゃない」
「ちぇ、黙ってればカッコ良かったのに」
 それでも耕平はジョナサンという男が首から下げていた鍵こそ、
玄関の鍵であろうという予測は立てていた。

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更新日:2015-07-13 17:29:04

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