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第10章 奇妙な果実
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南部の木には奇妙な果実がなる
葉には血が、根にも血を滴らせ
南部の風に揺らぐ黒い死体
ポプラの木に吊らされている奇妙な果実
美しい南部の田園に
飛び出した目と苦痛に歪む口
マグノリアの甘く豊潤な香りが
突如、肉の焼け焦げる臭いに変わる
カラスに突付かれ、雨に打たれ、風に弄ばれ
太陽に朽ちて やがては落ちてゆく果実
それは、とても奇妙な果実
~The Strange Frute~ ルイス・アレン 作
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「やはりそうだ。あの家に違いない」
「ええ…」
その建物は一部こそ下界を見下ろしていたものの、大半は周りの
木々の葉に覆われ姿を隠していた。
「それにしても昼間なのに、この辺りだけ夕方みたいな暗さね」
4人は館へと続く道を進む。
「住む者もいず、近寄るものもいないから枝がこんなに茂ったんだ」
「オバケが出るシチュエーションとしては、これで条件が
揃った訳だ。
洋館に闇、あとはムードを盛り上げる音楽が、ヒュー、
ドロドローッてね」
麻梨と健二の中睦まじい会話に耕平が悪戯に割って入る。
「やめてよっ!思い出すまいと努力してるのにぃ」
健二の腕にすがった麻梨が、思いっきり睨んで白い牙を剥く。
「わけいっても、わけいっても 青い山…か」
優香は頭上を仰ぎながら、静かに詠んだ。
「冴木さん、それ誰かの詩?」
「うん、そうだよ。沢本君、知らない? 山頭火よ。俳句なの」
「ふうん、俳句かぁ。どこまでも続く山の緑ってとこかな?」
「そうね。今の私たちのいる情景にピッタリじゃない?」
バサッ!
突如、背後で風が緑をひとすじ奪った。
「きゃっ!? 何? びっくりしたーっ」
「ただの風だよ。麻梨ちゃんは怖がりだな。これからオバケ屋敷に
入るのに大丈夫?」
「本当に入るんですか? 外から見るだけでしょ?」
麻梨はせっかく掴んだ健二の腕を放そうとしない。
「入るつもりさ。だって俺達は、その謎を解くために遠路遥々
ここまで来たんじゃないか」
「耕平、あんた聞いてなかった訳じゃないでしょう?
おじいさんは『あの家は呪われてる』って、はっきり言ったのよ」
「ああ、聞いてたよ。でも結局の所、みんな自殺とか行方不明
ばかりじゃん。なんて事ないさ」
「また、そんなこと言ってぇ。じゃあ、もしオバケが出たら
どうすんのよ?」
「たぶん戦っても勝ち目は無いから、さっさと逃げるね」
2人はまだ睨みあったまま、譲ろうとはしない。
「ほらー、優香ー。聞いた? 耕平って、こういう奴なのよ」
「うふふ」
優香は自分に話題を振られても、また始まったくらいにしか感じて
いなかった。
「先輩は私を守ってくれますよねー?」
「大丈夫だよ。何かあったら、その時は命がけで麻梨ちゃんを
守ってあげるよ」
ホントですかー?嬉しーい!先輩、だーい好きーっ」
一層、力を込めて健二の腕にすがる麻梨。
「耕平なんか、あっち行け。べぇー」
「おー、おー。熱い、熱い。これじゃオバケじゃなくて嫉妬に
狂った魔女でも出てきそうだ」
まるで長いトンネルのように深くて厚い木々の合間を縫って、
4人はさらに奥へと突き進んだ。
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南部の木には奇妙な果実がなる
葉には血が、根にも血を滴らせ
南部の風に揺らぐ黒い死体
ポプラの木に吊らされている奇妙な果実
美しい南部の田園に
飛び出した目と苦痛に歪む口
マグノリアの甘く豊潤な香りが
突如、肉の焼け焦げる臭いに変わる
カラスに突付かれ、雨に打たれ、風に弄ばれ
太陽に朽ちて やがては落ちてゆく果実
それは、とても奇妙な果実
~The Strange Frute~ ルイス・アレン 作
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「やはりそうだ。あの家に違いない」
「ええ…」
その建物は一部こそ下界を見下ろしていたものの、大半は周りの
木々の葉に覆われ姿を隠していた。
「それにしても昼間なのに、この辺りだけ夕方みたいな暗さね」
4人は館へと続く道を進む。
「住む者もいず、近寄るものもいないから枝がこんなに茂ったんだ」
「オバケが出るシチュエーションとしては、これで条件が
揃った訳だ。
洋館に闇、あとはムードを盛り上げる音楽が、ヒュー、
ドロドローッてね」
麻梨と健二の中睦まじい会話に耕平が悪戯に割って入る。
「やめてよっ!思い出すまいと努力してるのにぃ」
健二の腕にすがった麻梨が、思いっきり睨んで白い牙を剥く。
「わけいっても、わけいっても 青い山…か」
優香は頭上を仰ぎながら、静かに詠んだ。
「冴木さん、それ誰かの詩?」
「うん、そうだよ。沢本君、知らない? 山頭火よ。俳句なの」
「ふうん、俳句かぁ。どこまでも続く山の緑ってとこかな?」
「そうね。今の私たちのいる情景にピッタリじゃない?」
バサッ!
突如、背後で風が緑をひとすじ奪った。
「きゃっ!? 何? びっくりしたーっ」
「ただの風だよ。麻梨ちゃんは怖がりだな。これからオバケ屋敷に
入るのに大丈夫?」
「本当に入るんですか? 外から見るだけでしょ?」
麻梨はせっかく掴んだ健二の腕を放そうとしない。
「入るつもりさ。だって俺達は、その謎を解くために遠路遥々
ここまで来たんじゃないか」
「耕平、あんた聞いてなかった訳じゃないでしょう?
おじいさんは『あの家は呪われてる』って、はっきり言ったのよ」
「ああ、聞いてたよ。でも結局の所、みんな自殺とか行方不明
ばかりじゃん。なんて事ないさ」
「また、そんなこと言ってぇ。じゃあ、もしオバケが出たら
どうすんのよ?」
「たぶん戦っても勝ち目は無いから、さっさと逃げるね」
2人はまだ睨みあったまま、譲ろうとはしない。
「ほらー、優香ー。聞いた? 耕平って、こういう奴なのよ」
「うふふ」
優香は自分に話題を振られても、また始まったくらいにしか感じて
いなかった。
「先輩は私を守ってくれますよねー?」
「大丈夫だよ。何かあったら、その時は命がけで麻梨ちゃんを
守ってあげるよ」
ホントですかー?嬉しーい!先輩、だーい好きーっ」
一層、力を込めて健二の腕にすがる麻梨。
「耕平なんか、あっち行け。べぇー」
「おー、おー。熱い、熱い。これじゃオバケじゃなくて嫉妬に
狂った魔女でも出てきそうだ」
まるで長いトンネルのように深くて厚い木々の合間を縫って、
4人はさらに奥へと突き進んだ。
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更新日:2015-07-13 17:27:03