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小説

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第9章 館を覆う影

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「優香。おばあちゃん、心配してたねー」
 4人は遅い朝食の後、優香の祖母に見送られて家を出た。
「んー…うん…」
「どうしたのよ。まだ脳味噌、寝てんじゃないの?」
 外に出てさっそく新鮮な空気を吸うと、麻梨の軽快なお喋りが
始まる。

 ここでは車のクラクションも緊急自動車などのサイレン音も
聞こえない。
 都会では当たり前に聞こえる騒音が、ここには存在しないのだ。
 耳に届くのはせいぜい鳥のさえずりと時折、風になびく葉の
擦れ合う音くらいだ。
「うー、なんか…また…変な夢見たかな…」
「夢見たの? どんな?ねぇー、どんな夢なのよー」

 麻梨の好奇心にスイッチが入った。
 昨夜は、あんなに会話を拒んでいたのに自分の興味のあるものには
露骨に関心を示す。麻梨らしいなと優香は思う。

「んーとね、内容は全然覚えていないんだけど…朝、目が覚めたら
身体がこう、ふわふわしてて…足が地面に付いてないっていうか…」
「鳥にでもなった夢かしら」
「幽体離脱したんじゃないの?」
「そんな馬鹿な。耕平は漫画の読みすぎだ」

「まあ、夢ってのは人体の七不思議の内の一つだからね。
言ってみれば身体は眠ってても脳は働いてるわけでしょ? 
その間に悩が勝手に造り出したヴィジョンを、また別の思考が
その世界を彷徨(さまよ)ってる事になる。では記憶する為の
回路は一体、どうなってるんだろう、なんて考えると頭が痛く
なるよね」

「私は、あんたの講釈の方がよっぽど頭痛くなるわ」
「夢は脳が勝手に造り出したヴィジョンか…」
 澄みきった青空を見上げて、優香は言った。
「なに一人でセンチな気分に浸ってんのよ。ところでお2人さん、
これからどうしますか?」

「決まってんだろ。『呪いの館』を探索に行くんだよ。ねー、健さん」
「ああ、そうだな。でもその前に権三さんとか言う人に会わなきゃな。
おじいさんから電話、いってるだろうし」
「何か話しが聞きだせるといいけど」

「もう、男子って何でこうなのかしら。せっかく、こんな所まで
出てきて自然に囲まれて、しかも清楚で慎ましやかで礼節正しく
才色兼備な大和撫子が二人もいるってのに、何か感じないの?」
 背中にリュックを背負ったまま、プンスカ怒りを振り撒く麻梨。

「それをいうなら、軽薄で見栄っ張りで我侭でミーハーで二重人格で…」
「あー、うるさい。うるさい。ねー、優香ーっ。あんたも何か
言ってやってよ!」
「でも権三さんって、変な名前よね。うふふ」
 ここでも優香に救いを求めた私が馬鹿だった、改めて痛感した麻梨
だった。

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更新日:2015-07-13 16:55:09