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小説

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「まったくお母さんったら、あんなに怒んなくてもいいじゃない…。
ちょっと遅くなっただけなのに、もう!」
 夕食の席で散々絞られ最低の気分で優香は自分の部屋に戻る。
 着替えてちょっとベッドに横になったつもりなのに、すぐに睡魔が
襲ってきた。

(あー、眠い…まだ9時前なのに、何でこんなに眠いのかな…
昨日夜更かししたわけでもないのに…)
 まだ起きていたい、起きていようという気持ちがかえって眠気を
促した。
(もう駄目だ、起きてなんかいられない。瞼が重い…眠い…眠…)


…………………
 …ここはどこだろう…私はなぜこんな所にいるの?
 あたりは濃い霧で覆われて何も見えない
 水が流れる音が聞こえる きっと近くに川があるんだわ

 意を決して少し歩いてみると足場に雑草が生えているのが感触で
分かる
 ここはどこなんだろう 私はいつからここにいるのだろう

 霧が少しづつ引いていく 目は映るものを求めてせわしなく動く
思っていたよりずっと近くに川があったのでびっくりした

 沈黙は時として恐怖を呼ぶが今の私は自然の奏でるメロディーに
包まれている
 それでも忘却の彼方に置き去りにされた私の心は拠所を求め
彷徨(さまよ)う

 誰でもいいから早く私を現実の世界に連れ戻して欲しい

 やがて霧が晴れていき視界も同時に広がってゆく
川の向こう側に誰かが立っている? こっちに向かって手を振って
いるの?
 誰…誰? 声を出して聞こうと思ったが出来なかった。

 向こう岸の霧も完全に引き、その人物の顔がハッキリと見えた時…
あまりの恐怖に言葉を失ったからだ。

 そしてこの狂気の世界で意識を保てなくなるまでどれ程の時間も
必要としなかった
 遠ざかる意識の中で私はただ一つの事だけを確信した

 10年前、私を助けその日を境に忽然と姿を消した兄
まるで永い旅行から帰ってきたかのように優しく微笑みかける、
お兄ちゃんの顔…


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更新日:2015-06-27 11:27:56