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挿絵 500*394

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「殺人という訳ではない。が、人が一人、謎の死を遂げた事には
間違いはない」
「誰なんですか? それは」
「村長じゃ。結局、あれは自殺という事で葬られた。儂も長く
生きとるがな、あれ程までに悲惨な死は今までに見たことも
聞いたこともない」
「おじいちゃん…」
 優香が心配そうに見つめる。


「村長の家は川向こうの小高い所に建っておる。この辺では
珍しい洋風の家じゃ。もともとは日本家屋じゃったが、娘夫婦が
結婚してすぐに改築したと聞いた。ま、祝いの意味も兼ねて、
2人に期待を掛けておるという事だったのじゃろう。
おっと又、話しが横道に逸れてしもうたわい」

「自殺は家の中で、ですか?」
「うーむ、中というか…家の回りに頑丈な柵があってな。ほら、
よくあるじゃろ? 外敵が入って来れぬよう鉄で周りを囲ってある、
アレは何て言うのかな?」
「鉄柵? フェンスですか?」
「鉄柵か。ああ、そうかもしれん。一本一本が連なっており、先端が
矢尻のように尖っておるんじゃよ」

「それはまた、ずいぶん用心深いものですね。あ、お金持ちだから泥棒
対策なのかな」
「この村に、そんな悪党はおらんよ。熊やイノシシはおるけどな。
むしろ今になって、思えば魔よけの意味もあったのかもしれん」
「魔よけ…」

「村長は、その上を向いた槍のような鉄柵に向かって屋根から身を
投げたんじゃ」
「げーーっ、嘘っ!?」
「やだっ」
「む、むごい…」
「なんでまた…そんな死に方を」

「それは今、思い出しても地獄絵図を見るような恐ろしい光景
じゃったよ。村長の上半身には斜めに全部で4本の鉄柵が突き
刺さっておってな、しかも横棒があるから高さ2メートル程の
高さで止まり、両手両足がこう、ブランと下がり…」
「もう、やだ! やめて!」
 麻梨が両手で目を覆い隠す。

「あの…もしかして、その時に見に行かれたんですか?」
「もう、やめてったらー」
 麻梨が、なんとか会話を中断させようと試みる。
「見に行くもなにも手の空いた村の男たちは全員駆り出されたよ。
なぜなら村長の身体には深々と柵が貫き、しかも先端が
矢尻のように開いておるから、大の大人が10人がかりでも
抜けんのじゃよ…」

「それは大変でしたね」
「儂が着いた時、足元はもう血の海じゃった。それでもまだ大量の
血が柵を伝って流れておった。結局、4本全ての柵をグラインダーで
焼き切って病院に運んだがな、手遅れなのは誰の目にも
明らかじゃったよ」
「なんか…凄まじい光景が目に浮かぶなー」
「うー、気持ち悪いよー。恐いよー、もう止めない?」
 両耳に当てた手を、今度は口を押さえて麻梨が言う。

「あんなのは、もう二度と見たくない…特に突き刺さった4本の
柵の内、1本は顔面から入り頭蓋骨を割って後頭部へと飛び出して
おったんじゃからな」
「うげーーっ、それは酷い」
「自殺という事になっておるがな…村長も確か60をとうに過ぎて
おったと思うが、わざわざ屋根まで上がって飛び降りるなど。
儂だったら、あんな死に方は絶対しとうない」
「あの…おじいさん、もう止めませんか? この話し」

「このお嬢さんは、こう言っておるがどうする?止めるか? 
男の方は2人とも、まだ先を聞きたそうじゃが」
「ぜひ!」
「続けましょう!」
 健二と耕平が元気よく答える。

「優香ーっ、優香は反対だよねぇ?」
「うーん、恐いけど聞きたい気もするの。両親の田舎で
起こった事だし…何か、ここまで来て聞かずに帰るのも惜しい
気がして…」
「ちょっとぉ、そういう問題じゃないでしょう!」

「麻梨さんは一人で先に寝たらどうじゃな? ただし二階の奥の
部屋じゃからオバケが出るやもしれんが」
「じょ、冗談じゃない! いいわよ、聞けばいいんでしょ! 
聞けば。あ、そうだ。ちょっと場所、移動しようかな。ここ、
近すぎちゃって怖いんだもの」
 麻梨は老人の隣で話を聞いていたが、何を思ったか健二の隣に
移動し、さらに優香も隣に引き寄せた。

「あーー、これなら、ちょっと安心」
「麻梨ちゃん。でもここは、おじいさんの顔がもろに見えるよ。
まっ正面だから。いいの?」
「ひえーーー」
「では、麻梨さんが良い席を確保したところで、話しを続けると
しようかの」
「おじいさん、お願いだから恐い顔しないでね。楽しそうに話して、ね?」

「アホか、お前。そっちの方がもっと恐いよ」
「あんたら、人の顔を好き放題言いおって。これから話す事を聞いて
腰を抜かしても知らんぞ」
「また、人が死んだんですね?」
「そうじゃ。それも村長が亡くなった後、一週間と経っておらん」
「誰なんですか?」
「それはな…」

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更新日:2015-07-13 16:18:58

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