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小説

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「ねえ、沢本君。また一つ聞いてもいい?」
 耕平と並んで歩きながら、優香が質問した。
「雑学かい?」
「どうかな? あのね、人間って地球上で一番偉いの?」
「難しい質問だね、それは。でも少なくとも生物学的には正しいと
言えるんじゃないかなー。特に知能と言う点では」

「そっか…あー、そうだよね」
「でも個人的見解で言わせてもらえば、生物の中で誰が一番偉いか
なんてのは好きじゃないんだよね」
「どうして?」
「植物がいるから動物がいて、動物がいるから植物がいる。アメーバの
ような微生物や魚類それに両生類、哺乳類…みんなそれぞれが
助け合ったり、争い合ったりして進化してきたからこそ、今日が
あるのだと思う」
「ホントにそうだね」

「かつて、か弱かった生物が地表で立ち上がり、今の人間の形に
なるまでは気の遠くなるような時を費やしてきた…一口に進化と
言っても、その計り知れない変態を繰り返した結果、僕らは此処に
いるわけだけど、果たしてこの姿が本当に正しい進化の産物なのか
なんて誰にも分からないんだ…」
 例によって耕平の長い解説が始まる。それでも優香は興味深げに
聞いていた。
「そお…なの?」

「もし何らかの理由で、それこそどこかで道がずれていたら
クトゥルーやインスマス人のような異形の生物が地球上に蔓延し、
彼等こそが霊長を名乗っていたかも知れないでしょ?」
「ううー、それはイヤかも…」

(クトゥルー…か。いつの日か人類がこの一握りの雑草のように
踏まれるだけの存在になってしまうんじゃないかなんて、
考えない方がいいんだろうか?)
 自分の発した台詞の後に、妄想の世界に入るのは耕平の
いつもの癖だ。

「沢本…くん?」
(人類が今日までかけて歩んできた道程が、もし途中で歪められて
いたとしたら?)
「ねぇ、沢本君。気分でも悪いの?」
「えっ? あっ、いや、ごめん。何でもないんだ」
(そうだ…僕らはただ意味もなく進化し生き延びてきたわけじゃない…
今は誰も源流を探ろうとはしないけれど…いつの日かきっと、わかる
時が来る…)

 バス停の裸電球の下で、麻梨が手を振っている。
「何やってんのー? 遅いぞー。もう私は、お腹ペコペコだよ」

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更新日:2015-07-13 16:00:50