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小説

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第7章 彼方より来し者

挿絵 531*303

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「おーい、耕平、がんばれー!村が見えてきたぞー!」
「みんな、ちょっと待ってくれよー」
 目的の村へと続く砂利道を4人は歩いていた。いや、正確には3人と
かなり遅れた1人だ。

「耕平くーん、大丈夫ー?」
「麻梨ぃー!てめぇ、人ごとだと思って…はぁはぁ、いつか、ぶっ殺す」
 額に大粒の汗を流しながら、荒い息を吐き続ける。
「大丈夫? ごめんね、荷物持たせちゃって」
 優香が耕平のもとに駆けより、両手に持ったバッグのうちの一つを
持つ。
 耕平はローカル電車の中で麻梨の提案したゲームに乗って、
まんまと敗北し、余分に荷物を持たされていたのだった。

「冴木さん酷いよー。バス降りたら15分位って言わなかったっけ?」
「あっ、あの、それは村まで行く直行があったらなんだけど、
お茶してる間に行っちゃったから、もうこの時間だと歩くしかないの。
ごめんなさい」
 4人は電車を降りると、喫茶店でバスが発車するまでの時間を
調節していたが、お喋りに夢中になり、目的地行きのバスを
見過ごしてしまったのだ。

「て事はさー、村のバス停から更に15分はあるって事?」
「…そうなの」
「バスって、どれくらい運行してるわけ?」
「確か…朝と、お昼と…夕方の3回だったかしら」
「マジで?」
「うん。だから、さっき行ったのが最後なのよ」
「ヤバイ、ちょっと休むよ」
 耕平は自分のバッグを道端に下ろして、その上に座った。
「ねぇ、麻梨ーっ、先に行っててー!この先のバス停の所で
待っててよ」
「オッケー、分かったー。早くねー」
 優香は麻梨に声を掛けると、小さい方のバッグからハンカチを出して
耕平に渡した。

「サンキュ。あー俺、健さんみたいに体力無いからなー。情けない」
「そんな事ないよ。それに、沢本君は沢本君の魅力があるよ」
「そうかなー、ホントにそうならいいんだけど…」
「何か飲む?」
「いや、いい。それにしても本当に周りは山ばかりだね。携帯持って
きても無駄だって、改めて実感したよ」

「スゴイよ。コンビニも無いし、本屋さんも銀行も何にもないんだから。
エヘン」
 優香が胸を張って、自慢げに言う。
「時間が、この場所だけ止まってるんだね。数日、遊ぶ分には
楽しいかも」
「私は毎年、お盆とお正月には親に連れて来られるよ。1週間位は
コッチにいるかな?」
「そうなんだ」


「あ、ほら、見てココ! この草、小さな花が咲いてる」 
 2人の足元に生えていた小さな植物を見つけ言った。
「ホントだ。珍しいな、夏に花をつけるなんて」
「え? じゃあ、雑草でも花が咲くの?」
「咲くよ。草と名が付くのは、みんな花が咲く」
「へー、知らなかった。花って庭や野山に生えている植物の事じゃ
ないんだ」
「何か変だな? あのさー、雑草ってのは作物を除く全ての草花を
総称してそう呼ぶんだよ」
「ふーん。私は、てっきり道端に生えて花も咲かないような植物の事を
雑草って呼ぶのかと思った。一つ偉くなっちゃったな」

「雑学ついでに、もう一つ教えてあげる。女の子向けの可愛い知識だと
思うよ」
「うん。なーに?教えて」
「ハーブティーのハーブっていうのは、葉の大きな草花の事を
言うんだよね。そんでイネやススキのように細長い葉を持つ方を
グラスっていうんだ」
「すっごーい! 沢本君、そうゆう所もっと自慢していいよ。魅力だと
思うよ」
「所詮、雑学は雑学だよ。なんの役にも立たない…さ、行こうか」
「そうかなー…私はいいと思うんだけどな」

 2人バッグを手にゆっくりと立ち上がって、再び歩き始めた。
 辺りは、そろそろ暗くなり始めていた。山あいの夜は早い。


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更新日:2015-07-13 16:00:14