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小説

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挿絵 434*263

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「で、今度はこっちが聞きたいんだけど、あとどれ位で駅に着くの
かな?」
 ふと、思い出したように耕平が聞いた。

「うーん、あと2時間ちょっとってとこでしょ」
 腕時計を見ながら答える。
「えーーー、まだそんなにあるのー?」
「ふふ。じゃ、沢本君も寝ちゃっていいよ。着いても起こさないけど」
「そりゃーないよ。じゃあさ、もう一つ聞きたいんだけど駅から先は、
もう近いの?」
 耕平は到着時間よりも、むしろ優香と一緒にいる今の時間が
嬉しかった。

「私鉄電車に乗り換えて1時間、さらにバスに乗って20分位よ。
あとは歩いて…」
「ちょっと待った! まじで、そんなにあんの? さすがに遠いなー」
「うん。でも暗くなる前には着くと思ったよ」
 ニコニコと笑いながら、意地悪く返す。
「はぁー、やっぱり少し寝るよ。健康な身体はまず寝る事から
始まるんだ。中国の偉い坊さんが確か、そんな事を言ってたよ」
 溜息を一つ漏らして、窓際にもたれかかった。

「永遠の眠りについたりして」
 優香の意地悪な攻撃は続く。
「冗談じゃない。ちょっと夢を見るだけだよ」
「夢? うん。夢っていいね。響きもいいし、好きな言葉だよ。
明るい未来って感じ」
「そうかな?」
「うん。沢本君は、そうは思わないの?」

「そうゆう風に考えた事はなかったな。睡眠中に悩下垂体が見せる
一種の幻覚作用にも似た…」
「あんっ! だからそうじゃなくって。例えば好きな人の夢とか
見るじゃない。一緒に春の草原を走り回ったりとか、夜のネオンが
見える部屋で抱き合ったりとか…でも、目が覚めると、あー、夢だった
のかって思うの」
「少女漫画の読みすぎ」
「失礼しちゃう。とにかく、そういうのを夢っていうのよ」

「恐い夢を見る時だってあるぜ」
「その時は目が覚めると大好きな彼が大丈夫だよって、
おでこにキスしてくれるのよ」
「冴木さん起きてる? 夢、見てんじゃない? それとも麻梨の
毒気にあてられた?」
「ふん、眠いんでしょ? いい夢見てね!」
 優香は少し怒ったように頬をふくらませ、そう言うと視線を窓の
外へと移した。

 耕平は静かに目を閉じる事によって、それに答えた。
(夢を見るのは人間だけなんだろうか? 人間のどす黒い欲望が
夢という言葉に置き換えられているに過ぎないんだ)

(ただ、それが延いては現代の人間社会を作り上げてきた産物で
あることに変わりはないか…愛しい人の夢を見て目が覚めた時にも、
その人に側にいて欲しい。これも欲望には違いない。冴木さんは、
こんな言い回しは嫌うだろうけど…)

(でも、冴木さん。目が覚めた時、側にいるのが愛しい人ではなく
化物だったら…その時はどうするんだ…)

 優香は暫くして耕平が寝ついたのを確認すると、静かにシェードを
下ろし自分も目を閉じた。

 2時間後、結局4人は席を代わることもなく、その目的の地へと
足を踏み入れた。

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更新日:2015-07-11 16:29:45