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小説

携帯でもPCでも書ける!

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「ふーん、じゃあ優香のお兄さんって、あんたが小さい頃に
死んじゃったの…」
買い物を終えた優香は、待ち合わせした女友達とファーストフードに
入った。

「うん。私が6歳の時、両親の実家に遊びに行った時なんだけど、
2人で川の近くで遊んでたら私が足を滑らせて落っこちたみたい
なんだよね」
「あんた、ぼおーっとしてるもんね。で、お兄さんが身代わりに
なって助けてくれたってわけ?」
「よく憶えてないんだけどね。でも…多分そうだと思う。
だって私は今、こうして生きてるし」
「悲しい思い出だねぇ。で、あんたは誰かを呼びに行ったの?」
「それが…私はずぶ濡れになったまま、ずっと泣いてたんだって」
「へー、まぁガキだから仕方ないか…で、お兄さんは見つかったの?」
「ううん…それがね」
「何?何?どうしたのよ」

 榎本麻梨。この好奇心旺盛な友人は高校に入ってから知り合った
仲である。
 性格など正反対な部分も多いが、優香の父親の仕事の関係で
 この町に越して来て以来、2人は時間を共有する事が多い。
 2人はクラスこそ違えど、休み時間だけでは足りず、休日までも
雑談に花を咲かせている。

「ほらー、黙ってないで教えてよ。私とあんたの仲じゃない。まさか
思い出話に涙が込み上げてきたなんて事ないんでしょう?」

「うん、それはない。小さかった頃の事だし、ほとんど…っていうか
全く記憶が無いんだよね。ただ…」
「ただ、何?」
「ちょっと引っ掛かる事があるの」
「うん、うん。それは?」
「消防団とか村の人達がね、何日もかけて捜し回ったのに結局、
お兄ちゃんは見つからなかった」

「川の流れが急だったとか、深い所があって見つけられなかった
とか?」
「確かに子供の頃は自然の川が珍しかったから、すごく大きいような
気がしたけど、多分普通の川。深い所でも大人の身長くらいじゃない
かな」
「引っ掛かる事ってそれなの?」
「うん。それともう一つ気になるのは、村の人が泣いてる私に聞いたん
だって、『お兄ちゃんはどうしたの?』って」
「うん」
「そしたら私何て答えたと思う?『魚の人がお兄ちゃんを連れてっ
ちゃった』って言うんだって」
「何それ」

「わかんない。全く憶えてないの。そんな事言ったことさえ…」
「実はお兄さんは川に落ちてないんじゃない?」
「その線もあたってみたし、何にしても変なのは川の上流の方を指して
『あっち、あっち』って言うんだって」
「きっと混乱してたのね。あんた女の私から見ても、かなりおっちょこちょいだもんね。お兄さん、もし生きてても心配で目も離せない
んじゃない?」
「うぅ…それ、うちのお母さんの口癖」
「やっぱりね。ところで優香のご両親の実家ってどこなの?」

「赤無。赤白の赤に無限の無で赤無。両親は2人ともここで
生まれたんだって。すっごい山の中で携帯も繋がらないしコンビニも
無いんだから、すごいでしょ。あるのは山と畑ばかりだよ。そうだ!
夏休み一緒に行こうか? 東北だから避暑にはいいし、親戚ん家
に泊まれば電車代だけでオッケーだよ。どう? 行く? 行く?」
「ま、長い夏休み、それも悪くはないか。来年は受験できっと
旅行どころじゃないだろうしね。うー…、イマイチ色気がないのが
残念だけど、まー、それは現地調達という手でいくか!」
「んん?」

「広く澄み切った空の下、自然に囲まれた日本の片田舎で知り合った
ばかりの若い青年との恋萌…えるような緑の中で急速に接近していく
2人…真っ黒に日焼けした彼の太い腕が私の肩に触れる」…
「あのー、ちょっと麻梨…?」
「澄んだ彼の瞳の中には私だけが映り、言葉さえなくした2人の唇は
そっと重なり合うと…」
「…?」

「やがて彼の手は私の腰へと…ってあのさー。何かツッコミ入れてよ!
一人で喋ってる私がバカみたいじゃない!」
「ごめーん。だって面白いから最後まで見ていようかと思ったの」
「もう!優香はタイミングを読むって事を知らないんだからー。
で、いつ行く? 計画立てようよ」
「うん、いいよ。えっとねー」

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更新日:2015-06-27 11:14:39