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小説

携帯でもPCでも書ける!

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「冴木さん、どうしただよ? こんな朝早くから呼び出すなんて、
まだ7時前だぜ」
 中央公園の像の前で待っていた優香の前に、耕平が不平を
漏らしながら到着した。

「ごめんなさい、わけは後で話すから。えーと、麻梨はまだ時間が
かかりそうね」
「ちぇっ、麻梨も来るんだ…」
「え?」
「あっ、いや何でもない。それよりどうする? 麻梨が家を
出たか電話してみようか? 携帯持ってきたけど」
 ポケットから取り出して見せる。

「あ! 新機種ね。いいなぁー、ウチは大学に入るまで持っちゃ
駄目だって言うの。厳しすぎると思わない?」
「非行の原因になるとかで、学校や教育委員会も問題にしてるしね」
「だって私、高校生だよ。中学生なら、ともかくさー。今時、
みんな持ってるもん」
「もう少しの辛抱じゃん」
「そうだけどねー」

「で、どうする。麻梨にかけてみる?」
「いいわ。場所も言ってあるし、先に行きましょ」
「場所って?」
「ジョナサンの家よ」
「やっぱり。ところで貴重な試験休みまで使って早朝から通うなんて、
麻梨が知ったら怒るんじゃないかな?」
「…怒ってた」

「だろうね。ところで冴木さんを、そこまでさせる魅力って何なのか、
僕は、そっちの方が興味あるよ。絵? それとも彼の方?」
 耕平は、うつむき加減で歩きながら聞いてみた。

「あっ、今、沢本君。自分のこと『僕』って言った」
「いいじゃんか、別に。それでどっちなの。質問に答えてよ」
「うーん、最初は多分、絵だったと思うんだけど…どうしようかな?
 後で話そうと思ったんだけど…その何て言うか、今日は違うのよ。
 夢の中でジョナサンの声が聞こえて…何かを訴えていたような
気がしたの」
「え? 夢?」

「沢本君、私ね…ここんとこ、ずっと悪い予感がして止まらないの。
それが何かは分からないんだけど…」
「虫の知らせってヤツかな? そんなら食べる物を持ってきた方が
良かったんじゃない?」
「持ってきたよ。ほら」
 優香は背負ってきたリュックを指してウィンクした。

「もしかしてカップ麺?」
「うん。あとパンと牛乳も、こっそり持ってきてしまいました」
「ははは。そっか、じゃ悪い予感が当たらなければいいね」
「えへへー」
 二人の小さな笑いが誰もいない静かな公園に、ちょっとした華を
添えた。

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更新日:2015-07-04 18:51:28