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小説

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挿絵 400*534

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「なんだ、なんだ?」
「なーに?どうしたの」
 麻梨に呼ばれて、二人が駆け寄る。

「この部屋暑いし臭いし、ちょっと窓を開けようと思ったんだけど
ココ固くって」
「どれどれ…あ、本当だ。こりゃ開かないな。木枠の部分が腐って
開閉出来なくなってるよ。無理に力を加えれば多分開くと思うけど、
後で壊して怒られるのは嫌だしなー」
 それでも何度か、押したり引いたりとチャレンジしてみたが無駄に
終わった。

「そうね。ま、いいや。ねーねー、優香んちってさー、こっちの
方角じゃなかったっけ?」
「あ、そうそう。見えるよ、あの二階建ての青い屋根がそうだよ」
「え?ここから冴木さんちが見えるの? どこどこ? 青い屋根って、
いっぱいあるぜ」
「ほら、ちょうど二階の部分だけ見えてる家があるでしょ。窓が
あって…」
 優香はガラス越しに説明するが、上手い方法が見つからないでいた。

「そんでさー、えーと…どうやって説明しよう…あ、ほら、そこの
公園の緑の中に平和像があるでしょ。空を指してる手が見える?」
 元通りに立てられた像を指して言った。
「ああ、あれね。見えるよ」
「あの人差し指の先を真っ直ぐ上に辿るとすぐに、青い屋根の
二階部分が見えるじゃない」
「あーっ、あそこか。やっと分かった」

「優香ー、耕平に教えると、ろくなことないよ。パンツ盗まれても
知らないから」
「お前、ほんっとに失礼な奴だな。俺がそんな事するわけねーだろ!」
「どうだか。ね、優香、それよりさ、どうすんの?これから」
「うん…ジョナサンが、あれじゃあね」
 ジョナサンは相変わらず呪文のように呟きながら、黙々と筆を
滑らしている。

「芸術家ってさー、変わった奴多いじゃん。集中してる時は何を
話しかけても無駄なんじゃないの?」
「しーっ。聞こえちゃうよ」
 優香が口に人差し指を当てて注意する。
「あ、ゴメン」
「何、描いてるの?」
「何かしら…? ほとんど黒一色で塗りつぶしてるみたいに見えるけど…」
「黒で下塗り? 夜景か、それともまたモンスターでも描くのかな?」


「やめてよ。ねぇ、帰ろっか?」
「…そうね」
「俺ら、一体何しに来たんだ?」
「さあ」
 3人は何の収穫もなかった獣のように、すごすごと退散し始めた。
「ジュースも温まっちゃったね」
「うん」

「あーあ、また貴重な青春の一ページを無駄に過ごしてしまったわ」
「俺なんか、まだ一言もあの外人と会話してないんだけど」
「私もよ!」
「2人とも、ごめんねー」
「別に冴木さんのせいじゃないよ」
「いや、耕平。あんたが悪い!」
「なんで俺が悪いんだよ」

「きっと彼は生粋の男嫌いで、しかも若くて可愛い女の子じゃないと
話をしないのよ」
「じゃ、麻梨。お前も駄目じゃん」
「キィーッ、何ですってぇー?」
「喧嘩するほど仲がいい…か」
「優香! 言っておきますけど私はこんな奴の…」
「こんな奴とは誰のことだよ」

 3人は公園を横切りながら、それぞれ家路へと向かう。
 そんな光景を中央公園の平和像は、静かに見下ろしながら見送った。

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更新日:2015-06-29 09:32:45