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小説

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挿絵 200*150

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「まったくもう、何考えてんのよー。病院を抜け出すなんて…」
(それにしても)
 放課後、すぐにかけた電話がなかなか繋がらなかったり、何だか
妙に院内が慌しそうな雰囲気を思い出しながら、優香は不安を
覚えていた。

 それでも用件を終えると、校門を出て足早にジョナサンのアトリエへと
向かう。

「え? あれは何かしら?」
 公園に入ると、すぐに20人程の人だかりが目に留まった。
 野次馬根性丸出しで近づき、人垣の間から懸命に背伸びしをして
話題の中心を探る。

 どうやら中央公園のシンボル、平和の像が何者かによって倒された
らしい。
 優香は耳をウサギのように立てて、管理人や復旧作業してる人達の
話に神経を集中させてみた。
「どうやって倒したんだろうなぁ?」
「悪戯にしては、ちょっと度が過ぎるよな」
 作業員以外、周りは自分と同じくただの通行人のようだった。

「いつも来てるアイツらじゃねえのか? 授業サボって煙草吸ってる
高校生がいただろ」
「北高のヤツらか? 一度、大声で注意した事があったからな。根に
持ったかな」
「いやー、それにしても、これは無理だろう。車を使ったって、そう
簡単にコイツは倒れねーよ」
「それに正面からは車、入れねえしな。第一ほら、タイヤの跡がない」
 関係者達は、あたりに何らかの痕跡が残っていないか探す。

「おや? あんた、北高の生徒だね?」
 男たちの一人が優香の制服に気づいて言った。
「え? あ、はい…そうですけど」
「あんた、何か知らない? 心当たりない?」

「私、何も知りません!」
 捨て台詞を残すとまるで、後ろ足で砂をかけるようにして、その場を
去った。

「まったく何よ! 北高の制服を着てるというだけで犯人扱いされたんじゃ、たまったもんじゃないわ! 大体、町で何かあると、いっつも
ウチの生徒が疑われるってのも大いに問題ありね。
 私みたいに、ただ家と学校の往復だけしてるだけの真面目な生徒も
いるっていうのに。もう、頭にきちゃう」

 独り言の内容と、現在の行動が大いに矛盾している事に一向に
気づかない不良生徒は倉庫へと向かう… 
「あれ?今日はシャッターが上がってる」
 倉庫に着いた優香は、上まで大きく開かれた入り口を見上げ言った。
「使われてないとはいえ、たまには中を換気するのかしらね」
 光が差し込み、ガランとした内部は倉庫内の奥まで照らし出して
いた。
 使われていれば、ここには大量のダンボールや什器類が所狭しと
置かれているのだろう。
 だが、今はまったく無いに等しい。

「あ、ここにも上に行く階段がある。誰もいないし、今日はこの階段
使っちゃおっと」
 優香は裏の階段より、さらに傾斜の急な階段を上がり始めた。
 それは階段というより梯子に近い作りで、両手を使わなければ
上がるのが困難なものだった。

「ジョナサーン! いるのは分かってんだからね。隠れてないで出て
きなさいよ! あなたのお陰でねー、さっき公園に寄り道したら
犯人にされそうになったのよ。まったくもう」
 屋根裏を見上げながら、先ほどの公園での怒りの矛先を向けている。
 だがその、はちゃめちゃな言葉は傍から聞いてもまったく理解不能
だった。


「オー、ユカ。ウェルカム、元気デスカ?」
「きゃっ! いきなり顔を出さないで。びっくりするじゃない!」
 四つん這いで突然顔を出して登場した外人と、怒りを隠せない女子
高生の対面は見ようによってはこれ程、滑稽なものはない。
「ユカ、今日恐イネ」
「あったり前でしょ! さっき、公園で危うく私が犯人に…あ、そう
じゃなくて。ジョナサン、あなた病院逃げ出したんだって?」

「モウ元気ナッタ」
「駄目じゃない! ちゃんと精密検査受けなくっちゃ」
「夢ヲ見タ」
「夢?」
「ソウ、恐イ夢ダ。霧ノ中二、人ガ立ッテイタ…」
「えぇっ!?」

 優香の全身に、ぞっとするような戦慄が突き抜けた。

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更新日:2015-06-29 09:30:27