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小説

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第1章 1日の始まり

挿絵 272*208

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 その日の朝は数日続いた雨が嘘だったかのように、見事に晴れ
上がっていた。
ベッドから見える空も雲の欠片すら見あたらない。

(あれ? 何故だろう…窓が開いている、お母さんが開けたのかしら?)

 優香は寝返りをうち、ふと時計を見るとすでに朝とはよべない時間に
なっていた。
「いっけない! 今日は麻梨と買い物に行く約束があったんだ」

(今まで日曜日でもこんな時間まで寝てたことなんてなかったのにー)

 パジャマのまま急ぎ階下に下りていくと、キッチンから出てきた
母親にぶつかりそうになる。
「あ、お母さん、お早う」
「何言ってんの、ちっとも早くないわよ。今何時だと思ってんの?」
「分かってる、分かってる。え~と、タオル、タオルっと」
「優香、それよりあなた今朝方、上で何か音がしてたけど知ってる?」
「ううん、何時頃?」
「5時か6時頃だったかしら」
「完全に爆睡してたからなー。あ、そういえば私の部屋の窓が
開いてたけど」
「ちゃんと鍵掛けておかないからよ。泥棒が入ってきたらどうするの」

(鍵? 鍵って? 何だったかな…えーと、思い出せない…
鍵、鍵、鍵…)

「お母さん、鍵って言った?」
「優香、あなた人の話聞いてなかったでしょ!寝る前に窓に鍵を
掛けなさいって、いつもお父さんが言ってるのに」

(そうじゃない、何か分からないけれど記憶の奥底に引っ掛かるもの…
鍵…鍵…だめだ、思い出せない。でも何か大切な事だったような)

「優香ったら又、ぼおっとして。ねえ、優香どうしたの?」
「えっ? あっ! ヤバイ、麻梨と約束してんだった。お母さん、
続きは今度ね」
 慌てて顔を洗い部屋に戻って身支度を終えると、壁に貼られた
小さな額に声を掛けた。
「じゃあ、行ってくるね。お兄ちゃん」
 額に収められたその小さな写真には、仲良く手を繋いで笑っている
二人の子供の姿があった。

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更新日:2015-06-27 11:12:17