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小説

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挿絵 190*230

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 優香にはどうしてもここ数日、気になって頭から離れない疑問が
いくつもあった。

 何故いつも閉じたはずの自分の部屋の窓が開いているのか…
 別に盗まれたものがあるわけではないから泥棒ではないとは思うが、
それにしても気にかかる。

 …いや、無くなったといえばただ一つ、兄の写真を入れてあった
小さな額…
 あんなものは他人が持っていても何の益になるものではない。
その後も部屋を何度も掃除したけれど出てこなかった。
 一体、誰が…何のために?

 そんな不安を抱えたまま寝るからだろうか、決まって朝になると
ひどい汗をかいている…
 きっと恐ろしい夢を見ているに違いない…

 子供の頃は恐い夢を見たとき、泣きながら母親を夜中に起こしたと
聞いた。

「魚の人がお兄ちゃんを連れていった」とか「大きなカエルが出た」と、
夢の話をしては困らせたらしい…
 なのに何故、今は夢の内容を覚えていないのだろう? 恐いほど何も
覚えていない…

 人間が夢を見るのは生きている限り、当然起こりうる現象で
不思議な事でも何でもない。
 それは健康な人間ほど、より現実に体感しているように感じると
聞いたことがある。

 しかし目覚めた時に、それを思い出せるかどうかは何によって
決められるのだろう?
 闇の手によって更なる暗黒の世界に引きずり込もうとする自分を
救ってくれるのは、目覚まし時計であったり母親の声であったりする。

 でも、それが何なのだ。
 目覚めと共に現実を確認したとして、つい数分前までは夢の
世界こそが現実だと確信していたのではないか?

 頭の中で答えの出ない不安と苛立ちが入り混じって、ぐちゃぐちゃに
なっている。
 目を閉じるとそれらは頭の中で不定型に具象化される。
 やがてそれは何十本もの黒く長い触手となって私を包み込もうと
広がってゆく。

 必死に逃げようとする私…追ってくる真っ黒な触手…逃げる…
 すぐ後ろに迫っている…
 私の名を呼んだ気がした…しかし振り返れば掴まる…
 止まっては駄目だ。
 そしてついに、闇の手が私の肩を掴んだ!

 堪らず目を開き現実に戻った。なのに急いで後ろを振り返ったのは、
まだ自分の肩が掴まれたままだったからだ。

「なっ? なんだー! 麻梨かー、びっくりしたー」
「びっくりしたのはこっちの方よ。さっきから何度も呼んでるのに
無視するから、来てみれば凄い形相で睨みつけるんだもんっ。恐かったー」
「ごめん、ごめん。考え事してたの」
「ふーん、考え事ねー。何も悩みなんか無いと思ってた。優香には」
「ずいぶんネ。さっ、行こうか。ジョナサンのアトリエに」
「うん、行こう。行こう」

 優香は麻梨の笑顔を見て、たった今まで考えていた悩みを排除した。
 少なくとも麻梨との楽しい時間だけは共有したいと思ったからだ。
 麻梨の楽観的な性格は自分を、そうさせることに十分値するだけの
ものがあるのだ。

「反省するだけなら猿でも出来るんだもんね」
「優香、あんた何言ってるのよ? おい、頭大丈夫かぁ?」

 しばらくして二人はいつものように仲良く校門を出て行った。
 そして、そんな二人を見届ける一つの黒い影があった…

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更新日:2015-06-27 16:11:39