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「ほら、ここだよ。見て…」
 先頭の耕平が立ち止まり、見下ろしながら指差した。
「こ…これは一体…?」
 健二がライトのスイッチをオフにし、やはり見下ろすと言葉を
詰まらせた。

 ほぼ円形の広場に村人達が5、60人いや…もしかしたら、
それ以上の人が集まっている。
 辺りにはぐるりとランプや松明(たいまつ)が点けられ明かりは
十分すぎるほどだ。
 天井は高くドーム上にくり貫かれている。中央に直径4、5メートルの
水溜りが確認できる。
 村人達はそれを取り囲むように集い、ぶつぶつと例の呪文を
口ずさんでいた。
 耕平たちの立つ場所には足場があるものの、そこから直接下へ
飛び降りるには高すぎて不可能だ。
 下りる為には、さらにドームを沿った脇の穴を進む必要がある。

「どう? 冴木さん、おじいさん見えた?」
 優香と場所を替わった耕平が聞いた。
「うん…え…と、あっ! あそこだ…見えた」
 優香が指をさすが男たちは皆、似たような姿で詰めているので
見分けがつかない。
「どうする…? 耕平、下に行ってみるか?」
「そうだね。冴木さんが確認出来たのなら、後は俺達で無理矢理にでも
連れ出せるし」
「そんなこと出来る?」
 やはり麻梨が心配そうに聞く。

「大丈夫じゃないかな。どうも様子から察するに抵抗するとは
思えないし、これだけいるんだから一人ぐらい抜けてもバレないん
じゃないか」
 力には自信がある健二が作戦を説明する。
「…うん。冴木さんと麻梨ちゃんは一緒に下まで行ったら、出口の所で
待っていて。上手くおじいさんの手を引くことが出来たら、
4人で一気に外に連れ出そう」
「うん…分かったわ」
「…はい」
 2人の返事を確認すると今度は健二が先頭に立ち、再び下へと続く
穴を進んだ。

「どうやってあんな所に空洞を掘ったか知らないが、いいかげん
歩くのも飽きたな」
 疲労も心労も極限状態にあったが、今度こそ村に帰れると思うと
全員、最後の力を振り絞り耐えた。
「私も疲れたー。あんまり寝てないし、足がガクガクだよ」
「麻梨、もう少しだけ我慢してよ。下に着いたら座って待ってて
いいからさ」
「ごめんね…麻梨。私のせいで…」
 10メートルにも満たない高さだったのに4人は意外な程、
長い距離を歩くことになっていた。

「あ、声が大きくなってきたよ」
 耕平が歩みを緩め言う。
「例の呪文だ…ついに始まったのか? どう思う?」
「ほぼ…いや、間違いなくクトゥルー復活の儀式だと思うよ」
「やはり、そうか。こいつは急いだ方がよさそうだ」

 本来なら走り出したい気分だったが、女子の体調も考えるとそうも
いかなかった。
 それでも徐々に歩みの速度を上げ声の元へと急いだ。


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更新日:2015-08-19 17:11:44

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