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第15章 終焉の宴
優香を見失った3人を待っていたのは、月明かりの中で大きく口を
開けた洞窟の入口だった。
まるで地獄へ通ずるかのような漆黒の穴の中に村人達は次々と
飲み込まれていく。
「ねぇ、この人たち誰かに引き寄せられてるって、さっき言って
たよね?私達、この中に入ったらきっと怪物に食べられちゃう
んだわ…」
今にも泣き出しそうな顔で麻梨は健二にすがる。
「前も言ったけど、その時は絶対に俺が守るから。それに、まさか…
そんな事は起こらないと…思う」
完全に否定しないのは健二の性格であり、現状を考えるとそれも
また難しい事だった。
「とにかく入ってみよう。このままじゃ、冴木さんを見つけるのは
ますます困難になってくるし」
消えかかったケミカルライトを穴倉の中に放り、また新しい
ライトを点した。
「本当に入るつもり…? 怖い…すっごく嫌な予感がする…」
足がすくんでしまったのか、麻梨は動けないでいた。
「もし…最悪の場合は、おじいさんには申し訳ないが冴木さんだけ
救出する。彼女の手を引き、ここから脱出する。麻梨ちゃん、
それならいいかい?」
まさに四面楚歌に近い状況で何とか説得を試みる。
「…」
「ごめん、やっぱ俺…一人で行くよ。健さんと麻梨は待っていて」
ついに耕平が耐え切れず入ってゆく。
「お、おい! 待てよ。その明かりだけじゃ危険だぞ」
慌ててライトを穴の中に向ける。
「大丈夫…中に所々、ランプが置いてあるみたいだ」
耕平は二人を待たず、入っていってしまった。
元々、自然に開いていたものなのか、それとも山から流れてくる水に
よって岩を切り出して出来上がった穴なのかは分からない。
だが、高さも幅も大の大人が余裕で通れる程だった。
「耕平は行ったよ。麻梨ちゃん、どうする…?」
「…本心から言えば行きたくない…でも優香も、おじいちゃんも
心配だし、それに先輩も耕平を一人で行かせたくないんでしょ?」
「そ、それはそうだけど…」
「…私なら大丈夫。後で、みんなに冷たい奴って言われたくないし…
それに先輩がついてるもの。私のこと…絶対に守ってくれますよね?」
「もちろん」
「じゃ、約束です。指きりしましょ」
「あ、ああ」
2人は一緒に指きりげんまんを唱え、健二は大きな胸で麻梨を
抱きしめた。
「うん! 元気出ました。さ、行きましょ。急がないと、それこそ
みんなバラバラに迷子になっちゃう」
「行こう!」
遅れて2人も穴に入る。
一体どれ程の時間をかけて地ならしをしたのだろう。蛇のように長く
うねった洞窟通路だったが不思議な事に足場は悪くなかった。
「耕平っ! 耕平。どこだーっ?」
「耕平、返事をしてぇ!」
最後の人間が脇を通過していくと、もう他に入ってくる者は
いなかった。
蝋燭を灯したランプは間隔をおいて置かれている。
すでに100メートル近く移動したと思われたが空気は淀んでは
いない。
「きっと他にも入口があるんだろうな…」
「もうっ。耕平ったら、どこまで行ったのかしら? 優香も」
さらに数十メートル進むと動かない2つの影を発見した。
「あれは…耕平か!?」
「うん…優香もいるみたい」
声をかけ急いで駆け寄る。
「冴木さんは見つけたけど、おじいさんが…」
うな垂れた優香の肩を優しく抱く耕平が答えた。
「ずっと付いていたのに、ちょっと躓(つまづ)いて見失ったと
思ったら…もう、お祖父ちゃんいなくって…急いで探したんだけど…
ううっ」
僅かな光の中で優香の頬を流れる涙が反射して光る。
「大丈夫。きっといるよ。約束するから。もう泣かないで」
慰め続ける耕平に健二は聞いた。
「何か見つけたのか?」
「うん。冴木さんに待ってて貰って先まで行ってみたんだ。この奥は
やたら広くなってて、そこに村の人達が集まってる」
「何をしてるんだ?」
「それは分からないよ。健さんたちの声が聞こえたから急いで
引き返してきたんだ。そこは、ここよりうんと明るいから4人で
探せば、おじいさんもすぐに見つけられると思うんだ」
「その場所っていうのは近いんだな?」
「もう、すぐそこだよ。ほら、先に明かりが漏れてるのが見える
でしょ?」」
「ああ、あれか。無気味ではあるが、ここまで来たら行くしか
ない…な…」
健二が麻梨の顔を見ながら言った。
「麻梨…ごめんね。ごめんね。う、ううっ」
「いいよー、優香。ほら、泣かないで。近いんなら行ってみようよ」
耕平は優香の肩を、健二も麻梨の肩を抱いてパーティは、さらに
奥へと進んでいった…。
開けた洞窟の入口だった。
まるで地獄へ通ずるかのような漆黒の穴の中に村人達は次々と
飲み込まれていく。
「ねぇ、この人たち誰かに引き寄せられてるって、さっき言って
たよね?私達、この中に入ったらきっと怪物に食べられちゃう
んだわ…」
今にも泣き出しそうな顔で麻梨は健二にすがる。
「前も言ったけど、その時は絶対に俺が守るから。それに、まさか…
そんな事は起こらないと…思う」
完全に否定しないのは健二の性格であり、現状を考えるとそれも
また難しい事だった。
「とにかく入ってみよう。このままじゃ、冴木さんを見つけるのは
ますます困難になってくるし」
消えかかったケミカルライトを穴倉の中に放り、また新しい
ライトを点した。
「本当に入るつもり…? 怖い…すっごく嫌な予感がする…」
足がすくんでしまったのか、麻梨は動けないでいた。
「もし…最悪の場合は、おじいさんには申し訳ないが冴木さんだけ
救出する。彼女の手を引き、ここから脱出する。麻梨ちゃん、
それならいいかい?」
まさに四面楚歌に近い状況で何とか説得を試みる。
「…」
「ごめん、やっぱ俺…一人で行くよ。健さんと麻梨は待っていて」
ついに耕平が耐え切れず入ってゆく。
「お、おい! 待てよ。その明かりだけじゃ危険だぞ」
慌ててライトを穴の中に向ける。
「大丈夫…中に所々、ランプが置いてあるみたいだ」
耕平は二人を待たず、入っていってしまった。
元々、自然に開いていたものなのか、それとも山から流れてくる水に
よって岩を切り出して出来上がった穴なのかは分からない。
だが、高さも幅も大の大人が余裕で通れる程だった。
「耕平は行ったよ。麻梨ちゃん、どうする…?」
「…本心から言えば行きたくない…でも優香も、おじいちゃんも
心配だし、それに先輩も耕平を一人で行かせたくないんでしょ?」
「そ、それはそうだけど…」
「…私なら大丈夫。後で、みんなに冷たい奴って言われたくないし…
それに先輩がついてるもの。私のこと…絶対に守ってくれますよね?」
「もちろん」
「じゃ、約束です。指きりしましょ」
「あ、ああ」
2人は一緒に指きりげんまんを唱え、健二は大きな胸で麻梨を
抱きしめた。
「うん! 元気出ました。さ、行きましょ。急がないと、それこそ
みんなバラバラに迷子になっちゃう」
「行こう!」
遅れて2人も穴に入る。
一体どれ程の時間をかけて地ならしをしたのだろう。蛇のように長く
うねった洞窟通路だったが不思議な事に足場は悪くなかった。
「耕平っ! 耕平。どこだーっ?」
「耕平、返事をしてぇ!」
最後の人間が脇を通過していくと、もう他に入ってくる者は
いなかった。
蝋燭を灯したランプは間隔をおいて置かれている。
すでに100メートル近く移動したと思われたが空気は淀んでは
いない。
「きっと他にも入口があるんだろうな…」
「もうっ。耕平ったら、どこまで行ったのかしら? 優香も」
さらに数十メートル進むと動かない2つの影を発見した。
「あれは…耕平か!?」
「うん…優香もいるみたい」
声をかけ急いで駆け寄る。
「冴木さんは見つけたけど、おじいさんが…」
うな垂れた優香の肩を優しく抱く耕平が答えた。
「ずっと付いていたのに、ちょっと躓(つまづ)いて見失ったと
思ったら…もう、お祖父ちゃんいなくって…急いで探したんだけど…
ううっ」
僅かな光の中で優香の頬を流れる涙が反射して光る。
「大丈夫。きっといるよ。約束するから。もう泣かないで」
慰め続ける耕平に健二は聞いた。
「何か見つけたのか?」
「うん。冴木さんに待ってて貰って先まで行ってみたんだ。この奥は
やたら広くなってて、そこに村の人達が集まってる」
「何をしてるんだ?」
「それは分からないよ。健さんたちの声が聞こえたから急いで
引き返してきたんだ。そこは、ここよりうんと明るいから4人で
探せば、おじいさんもすぐに見つけられると思うんだ」
「その場所っていうのは近いんだな?」
「もう、すぐそこだよ。ほら、先に明かりが漏れてるのが見える
でしょ?」」
「ああ、あれか。無気味ではあるが、ここまで来たら行くしか
ない…な…」
健二が麻梨の顔を見ながら言った。
「麻梨…ごめんね。ごめんね。う、ううっ」
「いいよー、優香。ほら、泣かないで。近いんなら行ってみようよ」
耕平は優香の肩を、健二も麻梨の肩を抱いてパーティは、さらに
奥へと進んでいった…。
更新日:2015-08-19 17:06:28