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二つの炎


孤児院【空の家】

――結城 翼



雲ひとつない空。爽やかな風。凛とした太陽。
そんな気持ちの良い朝だった。

清水の意味深な話を聞いた後、俺は天狗の許可も得て、ログアウトしていた。

次の待ち合わせは明後日。

天狗たちに用事があったのと、俺にもしばらくの間いろいろ考える時間が欲しいとの理由だ。


「翼兄ちゃん、おはよ~」


階段ですれ違った施設の子に元気な挨拶を、俺は笑顔と一緒に返した。
リビングに向かう途中に、ほかにも二人ほど挨拶を交わす。

いつもは誰かしらいるリビングも、今に限っては珍しく誰もいなかった。
俺はそんな寂しさを纏ったリビングの椅子に腰掛ける。

あれから輝也とは話していない。
いつも俺より先に起きて、俺より先にどこかへ行ってしまう。


『アナザー』が生んだ確かな亀裂は、想像以上に深く、大きなものだった。


日が経てば経つほど、思いとは裏腹に広がる亀裂。
輝也とどう接すればいいのだろうか。

おそらく、輝也は毎日『アナザー』にログインしているのだろう。
何をしているかなんて、具体的なことは定かじゃないけど、それだけは分かる。

『アナザー』で、もう一度輝也に会ってみるか?


「おう、今日も遅いな」

「予定ないから」


無人のリビングに前触れもなく入ってきたのは親父。


「何か食うか?」

「いいよ。自分で用意するから」

「たまには愛のこもった目玉焼き、作ってやるよ。大人しく座ってろ」


こうなったら聞かないので、俺は流れるままに親父に甘えることにした。
しばらくの間、親父が目玉焼きを作るシュールな効果音だけがリビングに流れた。

更新日:2011-11-09 22:13:56